今昔物語集 (光文社古典新訳文庫 Aン 2-1)
今昔物語集 (光文社古典新訳文庫 Aン 2-1) / 感想・レビュー
中玉ケビン砂糖
本編もこなれた現代語で勿論面白かったが、編訳者解説の「5W1H」論が刺激的。日文学史上最大級の仏教説話集ではあるが、いかんせん作者は未詳。ただその核は散逸した『宇治大納言物語』にあり、さらに遡って『日本霊異記』や大陸渡来の文献からの断片要素も窺えるので、遺漏なくほぼほぼ網羅はしているもののその膨大さが却って全体像を漠とさせている、というのがアカデミズム的な歯痒さだった。成立時期については振れ幅こそあるものの、科学的測定や収録作の傾向からある程度の絞り込みはでき割愛する。面白いのは、ある程度の自明性・蓋然性
2021/11/03
巨峰
今昔物語の世界にすっかり浸りました。きっと、中高の授業で1編くらい読んだ以来。リズムがよくて必ず落ちがある。91話でも、全体の1割にも満たない。いつか残りの物語も読んでみたいな。ところで、古典新訳文庫の日本文学は本当に素晴らしい。従来のこういった文庫版の古典シリーズは古典文学の誘いとか紹介とか入門とかをどこか意識している気がするけど、光文社古典新訳文庫については、ただただ読者に素敵な読書タイムを提供することが目的としている感じ。とてもおすすめです!
2024/10/11
たんかれ~
平安時代末期に書かれたという仏教説話集。全部で千話くらいあるうち、本書では91話を抜粋。淡々と描かれているけど、どれも人間臭くて面白い。芥川龍之介など多くの作家が著作のヒントにしたそう。そういえば井上靖の作品で読んだ話もありました。編者は不明だけど、それほど高位ではない僧侶がライフワーク的に書いたのではとのこと。納得。読み易い現代語訳に感謝!
2021/12/11
Sakie
平安末期、天竺、震旦、本朝の3か国の説話を日本人が編んだ長大物語集。都市伝説のようなものから、実話に尾ひれがついたようなものまで、今読んで面白い小話がひたすら続く。しかし口伝採録ではなく、文献を基にしているらしい。主役が特定されているものもそうでないものもあるのは原典が違うからで、時の権力事情とは関係な…くはなさそう。んで法華経推し。教訓めいた無理やりな締めくくりも後づけっぽいが、著者のアレンジなのか。芥川が短編に仕立ててみたくなるのもわかるような、よい骨格の物語がたくさんある。語ってなんぼの話だよなあ。
2024/06/13
こちょうのユメ
今昔物語を現代語訳で読めるのはうれしい。91の説話集は平安時代の貴族から一般大衆まで、面白くてヘンなエピソードを集めたもの。訳者によると「興味深い出来事がウワサとしてつたえられ、やがて物語として結晶したもの」だそうだ。中には、腫瘍の治療薬として胎児の肝を手にいれる平貞盛の残忍で戦慄する話。書類改ざんを命じた書記を口封じに殺す、今でも似たような話。また貴族、僧侶、民衆を問わず簡単にエッチをする話など、今と一緒じゃんと思える話が数多くある。こうしてみると人間の本性は、大昔からたいして変わっていないようだ。
2023/01/06
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