弦と響 (光文社文庫 こ 35-2)
弦と響 (光文社文庫 こ 35-2) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
コンサートはいつも夜にあって、ホールは森のような木々に包まれていた。私はいつも学校の帰りか、休日に家からバスでひとり訪れた。そこは雨だれ。ピアノは月あかりのイメージ。外が寒ければ寒いほど、そこの異世界感が身に染みて好きだった。「若い頃にできる限りの音楽に触れておけ」という精神で運営されていたそのホールで、学生のチケットは映画のそれより安かった。音楽に包まれた後風を切って切って自転車をこぐ夜をこんなに覚えている。いつからか足を運ばなくなったコンサート。少し切ない。また行ってみたくなったそんな夜。
2020/02/29
巨峰
弦楽カルテットの最後の夜。都築ホールに集う人たちを作者は共感を込めて描く。そして、降り続く雪。なんて大人の小説なんだろう。小池昌代さん、読むのは二作目だけど気に入った!
2012/10/14
ぶんこ
弦楽四重奏団のラストコンサートの日が、雪がしんしんと降る日だったことから、読んでいる私までが内省的になったようで、ストーリーよりも昨年から2年半が経とうとするコロナ禍で中止となったコンサートを思う。最も楽しみだったラフォールジュルネ。都築ホールからは紀尾井町サロンが思い出され、音楽の残響について思いを馳せる。そんな感想となったのもコロナ禍のせいか。4人の演奏者の後ろには、色々な人たちが携わっているというのも感慨深い。個人的には主婦の角田さんの感動の涙に共感する。
2021/06/25
絹恵
アンフレもいずれは弱まるように、終わりに向かう始まりを重ねていくことが、歓びと切なさを共存させることなのだと思います。そして思いが重なり合うときがたとえ一瞬だったとしても、それを忘れないようにテヌートで大事に大切にして、委ねてみよう、夢に、愛に、涙に。新しい始まりを待ちながら。
2015/04/21
penguin-blue
再読。コンサートホールの顔として長年の間、質の高い音楽を提供し続けてきた弦楽四重奏団。ひとりの引退をきっかけに解散することになり、ラストコンサートまでとをそれにまつわる思いを、メンバーや彼らに関わる様々な人々の視点で描く。好きだったものにもいつかは終わりがあり、年を重ねるにつれ、どうしてもそれを実感することが多くなる。昔と同じような煌めきやときめきは難しくても、長い時間を共有したことで受け入れられるようになったこともあり、愛着のあり方も変わってくる。そのあたりは前読んだときより今の方が共感できるかも。
2021/02/04
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