スターバト・マーテル (光文社文庫 し 20-3)
スターバト・マーテル (光文社文庫 し 20-3) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルの「スターバト・マーテル」(哀しみの聖母)が表象するのは光洋の妻、香織であろう。彼女は子どもの死を背負いきれなかったのだ。物語のプロットは複雑だ。何故なら40代半ばの男と女はそれぞれに過去を持つ。ことに光洋のそれは、けっして平坦ではありえなかった。篠田節子の描く大人の恋愛は痛切である。そして、そうであるがゆえに限りなく甘美でもある。過去を背負いながら明日がないのだから。これはある意味では究極の恋愛小説なのかもしれない。篠田の小説は生の極限を要求する。自分がそんな風に生きてこなかったことを悔やむ。
2019/12/31
マリリン
歳を重ねる程に積もる過去の重み。ふとした出逢いから振り返る。戻れない過去を... 命のある限り...み子に対し御身とともにわれにまことの涙を流させ苦悩させたまえ... 共有していない時間空への嫉妬心。失った子への想い。夫の優しさを冷静に解析する心。妻と子供との失なわれた時間を求めてさまよう男。そこには懺悔にも似た祈りと共に破滅への序章があった。心を抉られるような作品だった「スターバト・マーテル」。思わずクスッと笑ってしまうような「エメラルド アイランド」は登場人物がそれぞれ個性的で面白い。
2020/03/20
エドワード
乳癌の手術をした彩子は、夜のプールで、孤独な中学生時代に彼女を救ってくれた同級生・光洋と再会する。欝々とした日々に光が差す思いの彩子。光洋はクリスマスイブに彩子夫婦を食事に招待する。熟年の恋愛ものと思わせて、物語は光洋が勤務する精密機器企業の暗部、下請け工場への仕打ちや海外へ技術流出、兵器製造への関与など、先の読めない展開でぐいぐい読ませる。次どうなる?と思ったところでえっ!終わり?もう一編は、南国のリゾートで繰り広げられる、同じく大企業の技術者の悲哀。こちらは結婚狂詩曲を交えて賑やかに描かれる大団円だ。
2016/05/21
たぬ
☆4 新年早々重いのを読んでしまった。この感じはある程度人生経験を積んでいい意味でも悪い意味でもふてぶてしくなってきた40代半ばだからこそなのだろうな。社会的にも倫理的にも落ちていく二人にずっと暗澹たる気持ちだったけど…そういうオチか! 併録の「エメラルド アイランド」はディスり合戦が下品だけど痛快。秀樹、いい男じゃん。
2021/01/01
シャトル
【図書館】先日読了した「ブラックボックス」がとても良かったので、期待して借りましたが、本作は消化不良でした。次作に期待!表題の「スターバトマーテル」とは13世紀に出来た、カトリック教の有名な聖歌だそうです。 篠田節子2作品目 2013/09/21読了 2013-129
2013/09/21
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