ひやかし (光文社文庫 な 35-2 光文社時代小説文庫)
ひやかし (光文社文庫 な 35-2 光文社時代小説文庫) / 感想・レビュー
藤枝梅安
吉原で太夫から切り見世まで、異なる位の女郎たちのエピソードを綴った5編。それぞれの女性がそれぞれの事情で吉原に送られ、その日その日を生きていく。出会った男たちにもそれぞれ事情があり、事情と事情が絡まって、がんじがらめの男と女。身動きが取れなくなったとき、腹を括って思い切るのは女の方。所詮捨てられて売られたこの身。命があれば儲けもの。歌舞伎調あるいは講談調の文体が、女の心意気を鮮やかに描き出す。粋な小説である。
2014/12/10
タイ子
中島さんのデビュー作を含む5作品。様々な事情で吉原に身を置く花魁、遊女たちの生き様と彼女たちに関わる男たちの物語。何といっても、文章が七五調になっているのでテンポが良く読み易い。外に出られぬカゴの中で夜ごと心とうらはらに足掻き、もがいて身を尽くす。それでも、彼女たちには矜持がある。誰よりも負けてなるものかと。タイトルの「ひやかし」が一番好き。籬を見つめるだけで絶対に入らない一人の浪人。真相が判る時悲しい定めの先に遊女の道が見えてくる。デビュー作と思えない素晴らしい内容。もっと読みたい思いに駆られる作品集。
2021/08/29
たっくん
江戸から明治へ、吉原を舞台にした短編集。〇仲之町に面した五町の一つ角町の小見世巴屋の張見世。お茶を引く白妙を登楼もせず見つめる浪人が、白妙の運命を変える(素見)〇江戸町総籬菱田屋でお職を張る花魁朝霧。落籍、二世を誓った山崎屋の若旦那がいたが・・(色男)〇京町中見世紫乃屋の二階屋敷。「怨霊退散」と書かれた部屋方は夜ごと女の「すすり泣きの声」が聞こえて・・(泣声)他、遊女たちの艶めかしくも哀しい矜持、面白く読了した。
2024/01/09
papako
何かで気になって。すごくよかった。吉原の花魁たちの悲喜こもごも。今までの吉原ものの中でも、花魁や女郎たちが生きていたんだという実感がありました。『素見』家、運命に縛られて生きた武家の二人。恋でも愛でもなかったのかもしれないけれど、確かに結びついていた二人が切ない。『色男』いいなぁ、朝霧の涙がいい!『泣声』親は子のために鬼になる『真贋』これはドキドキした。いい気味だったけどね。『夜明』最後は帰ってきてくれたよね?どれも切ないけど、強く前向きな吉原の女郎たちの強さがありました。
2021/07/26
mike
江戸の吉原の廓に生きる花魁や切見世の遊女を描いた短編集。口減らしや男の作った借金のかたに売られた女。武家であろうと大店の娘であろうと売られた身には自由は無く常に死と隣り合わせの過酷な日々を送る。しかし一貫して描かれるのは彼女らの一人の女としての凛とした矜持だ。対照的に身勝手で女を食い物にする男の姿も浮かび上がらせている。お初の中島さん、とても面白くて文章も読みやすい。新たな作家さんに出会わせてくれた読メと読友さんに感謝✨
2024/01/25
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