妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街 (光文社文庫 う 18-3)
妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街 (光文社文庫 う 18-3) / 感想・レビュー
みっちゃん
どこかで見たよ…と思ったら【魚舟・獣舟】の短編の続きでした。ある事件により、空虚な心を抱え抜け殻のように生きる主人公。妖怪と人が共存する街、真朱で探偵の百目の助手に。妖怪酒で徐々に人間臭さが抜けるわ、時折寿命も吸われるわ…でも酷薄なはずの妖怪の方がよっぽど人間より、道理をわきまえ心優しく見えるから不思議だ。この本自体に妖怪に近しくなる呪がかけられているのでは(笑)ヒューマノイドと妖怪の「恋」がせつない【炎風】がいい。やはりこの手の話を書かせたら、作者の右に出る方はいないでしょうね!次も楽しみです!
2014/08/12
佐々陽太朗(K.Tsubota)
上田氏の著書『魚舟・獣舟』を読んだのは二〇一二年三月のことであった。その短編集第四話「真朱の街」を演繹する形でのシリーズが始まった。光文社の謳い文句は「妖怪ハードボイルド」なるもの。私が以前読んだものの中ではエリック・ガルシア氏の『さらば、愛しき鉤爪』を始めとする<鉤爪シリーズ>が「恐竜ハードボイルド」と呼ばれるものであったが、「恐竜ハードボイルド」が有るならば「妖怪ハードボイルド」があったとしても不思議ではない。第四話「炎風」に書かれた妖怪とヒューマノイドの恋が切ない。このシリーズ、読んでいきます。
2014/07/20
藤月はな(灯れ松明の火)
科学は妖怪を駆逐することなく、寧ろ、その助けとなった未来。科学SFと妖怪は目出度く、結婚することができたのです^^表紙絵があるのに百目は『HoLic』の侑子さんのイメージとなりますね。利己的なのに偽善や自慰的な悔恨でそれを隠す醜く、愚かで死んだような人間(邦雄、裕子、研究所の人間、リゾートで人工の享楽を貪る客)は嫌いです。対して飯盒の楽しさを語り、太一郎君の歪みを肯定する小豆洗いさんやヒューマノイドの明日香を愛するが故に独占欲を剥き出しにする風鎌、リゾート客を死んでも辱める<濁>の方が人間らしく、好きです
2014/09/30
巨峰
連作短編。妖怪と人間が名目的には共存する「真朱の街」。妖怪たちは人間の寿命を吸いながら暮らしている。この街に住むようになった心に傷を負った青年と、彼を雇う妖怪探偵百目。彼女は絶世の美女の外見を持っていたが、内面は…。『魚舟・獣舟』の1編から続く物語で、前半の数編は設定の確認を何度もするので少し鬱陶しい。まとめて出版する段階で手を入れるべきだと思う。中半からは良い面白くなった。数多の妖怪が登場するので、そういうのが好きな人は嬉しいかも。3巻まであるうちの1巻として壮大な前振りな感じがする。面白くなりそう。
2017/09/13
けい
近未来的な都市『真朱の街』そこに蠢く妖怪と人間。短編集『魚舟・獣舟』で語られた内容をエピローグ代わりに物語が展開されます。遺伝子工学や電子工学、情報工学が発達した未来の想定に、妖怪という古めかしい登場人物達がいい感じに溶け込んで、独特の世界観を創り出す。他の作品との時代的なリンクを想像させる感じが更にいいです。有名どころの妖怪を登場させながらも、どこか一味違う登場人物達。まだまだ導入部、これからの展開が楽しみなシリーズです。
2015/03/05
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