涅槃の雪 (光文社文庫 さ 27-3 光文社時代小説文庫)
涅槃の雪 (光文社文庫 さ 27-3 光文社時代小説文庫) / 感想・レビュー
初美マリン
不器用な生き方をする与力を軸に天保の改革をしっかりなぞっている。彼を取り巻く人々もかたくななまで不器用、かの鳥居耀蔵さえもぶれない。決して重くないが、しっかり心に残る作品。
2020/06/22
のぶ
人間味あふれた人物描写と、当時の時代背景が合わさった感動の一作だった。主人公は与力の高安門佑。ある事件をきっかけに、元女郎のお卯乃を屋敷に引き取る。粗野な性格だが、人柄は悪くない。そんな矢先に天保の改革が発布される。お上の厳しい締め付けに立ち向かう気骨ある与力と市井の人々の意地と気概が素晴らしい。水野忠邦の人物像も良く分かったし、天保の改革がどんなものかも理解できた。苦しい生活の中でも明るさを失わない卯乃の生き方がとても印象的だった。最近、続けて読んでいる西條さんの本。次は何を読もうかな。
2021/05/16
藤枝梅安
讃岐に流された後の鳥居耀蔵については、宮部みゆき さんの「孤宿の人」を読んでいただきたい。装画は北村さゆり さん。
2015/08/21
タイ子
「やい、やい!この桜吹雪を見忘れたとは言わせねぇぞ」の遠山の金さんが登場。ま、こんなことばっかりはやってないんですけどね。その遠山景元の片腕として北町奉行の与力を勤める高安門佑が主人公。天保の改革を推進した水野忠邦のえげつないやり方に憤る江戸庶民。対する遠山への好評判がさらに水野に輪をかけて政にしばりをつけていく。遊女だった女性を女中に入れた門佑の心にいつの間にか芽生える愛。南北町奉行を取り締まる2人の奉行の生きざまと門佑の正義感をじっくり読ませる。そして、ラストに思わぬ涙腺崩壊。これぞ時代小説の醍醐味。
2019/04/14
papako
たまたまちょっと前に読んだ『うき世櫛』と同じ天保の改革の時代のお話。だんだんと息苦しくなっていく江戸の町。その一部始終を見ていた同心門佑。水野忠邦の天保の改革は、結局何かを残したの?ちゃんと勉強してないと判断できないので、もっと知りたくなりました。そんな本筋よりも、門佑の姉の園江の婚家に対するけじめのつけ方が格好良すぎる。そして弟に仕掛けた策も素敵。そっか、長生きしていたら遠山の金さんは東京でも歩いているような時代の話なんですね。金さんじゃないけど。派手さはないし、なんでかわからないけど、すごくよかった。
2021/12/23
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