母親ウエスタン (光文社文庫 は 35-1)
母親ウエスタン (光文社文庫 は 35-1) / 感想・レビュー
アッシュ姉
父子家庭の一時の母親役をしながら全国をさすらう広美さん。献身的に面倒を見る彼女に救われた子供もいるだろう。でも突然いなくなってしまうので傷ついた子供も多いはず。彼女はなぜそんな生き方をするのか。理解できなくて、理由を知りたくて一気に読了。わあー!えー!そうきたか。そうか。そうだよね、ひ香さんだもんね。
2023/07/25
dr2006
やるせないが深奥を動かされた。寂然としたこの作品の雰囲気が好きなんだと思う。これは母の悲哀が築く無償の愛の物語だ。小さな子供がいる家族、妻の不在で些細な幸せが解らなくなってしまった男の切羽に広美は現れる。まるで自分が必要とされているのがわかるように。そこで親身にその家族を支え、空席となっている「母親」になるのだ。それにしても幾つもの家族の空席を転々とさすらう広美の生き方は不可思議だ。潮時を敏感に察し、定着せずにサバサバと去っていく。広美の真の目的とは?ニッチな題材が妙趣、原田さんの作品をもっと読みたい。
2019/10/10
泰然
自分はさておき、誰かが必要ならさらりと役目をする。妙齢女性・広美が「流しの母親」として身を処する姿がいぶし銀に光る。彼女に助けられる男達も、彼女自身の過去の人生もワケありばかりだが母子関係の安らぎ、男女関係の行間をドロドロ感なしで爽やかに新しい前向きな意味を提起できるのは巧い。人間の闇を否定しないで素直に認めて、自分の傷もさておいて社会の隅っこに仇花をふて腐らないで淡々と咲かせるカッコイイオンナ。本作の舞台は北海道等の辺境などの閉塞さ全開で、正に西部劇の流れの者のソレだ。善悪の間に母子の微笑が立ち上がる。
2023/02/18
ノンケ女医長
名前を尋ねられ、「たぶん・・・坂下広美だと思います」と答える女性 (132頁)。広美の生き方を、母性の結集などと称賛する人もいるのだろうが、私は「虫唾が走る」「絶対関わりたくない」と感じた。多くの子どもたちが、彼女に心を許し、理想の母親像だと思わせた。ある日、突然に家を去った広美。何もかも気まぐれだ。残された子どもたちは、新たな絶望を突きつけられたのに、義母を強く追い求める。男性にふっと近づき、易々と肉体関係を成立させ、その子供たちの心までをも奪ってしまう広美の魅力と闇。とてもザワザワとする読み心地。
2023/01/10
えりこんぐ
見知らぬ家に入り込み、子供達の世話をする。そしてまた姿を消す。不思議な話だった。広美のおかげで救われた子もいるが、心の傷が残った子もいてつらかった。共感はできないのに引き込まれて読んでしまう。広美は最後の場所を見つけられたのかな。
2016/04/11
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