彼女の時効 (光文社文庫 に 14-14)
彼女の時効 (光文社文庫 に 14-14) / 感想・レビュー
いつでも母さん
ー罪を償う機会を与えない限り、罪を犯した人間自身が救われないーくぅ・・10年前から既に新津きよみさんは読ませてくれたのだなぁ。犯人を突き止めない限り亡くなった者の人生は完結しないとも言わせてる。被害者遺族の思いでもあるよね。轢き逃げ事故で夫を喪った妻・久子と、別の轢き逃げ事故で亡くなった女性・政子の幽霊の出会いと別れまでを描く本作。幽霊だけどホラーじゃない。温かい気持ちになるが、やっぱり切ない。
2022/04/09
じいじ
いま、手元にある新津作品4冊の中からこの長編をチョイス。暑さ真っ盛りには最適でした。夫を自動車事故で亡くした主人公・久子が、幽霊と同居するのですから…。正直に白状するとこの手のホラーは苦手なんですが。今作のテーマは、一向に減らない「自動車による死亡事故」です。法改正で悪質な「ひき逃げ事故」には、加害者の時効は撤廃されましたが、迷宮入りになっては被害者の家族はいたたまりません。気の弱い爺にも、思わず笑いがこぼれるホラーなので楽しむことが出来ました。
2023/08/21
ミーコ
最初から読みやすく、直ぐに引き込まれました。久子と幽霊の政子との生活が面白く いつまでも この生活が続きます様に…と願ってしまう。最後には久子と同じく寂しさを感じました。政子を殺したのは誰❓と気になり一気読みでした。物語としては面白かったです。サラッと読める1冊です。
2015/12/28
ジンベエ親分
夫を轢き逃げされた47歳の女性(久子)と、轢き逃げされた上に絞殺された享年47歳の女性(政子)の幽霊が同居する話。どちらの事件も時効を過ぎていて、なおも気持ちを整理できない遺族と被害者本人の思いが交錯する。特に政子の娘の加奈子と久子の交流がジワジワと涙腺を刺激する。この2つの事件の真相も小説である以上、明らかになっていくのではあるが、それより最後まで変わらず彼女たちの心情に穏やかに寄り添う文章が胸に沁みた。「罪を償う機会を与えない限り、罪を犯した人間は救われない」と繰り返される、どこまでも優しい小説。
2018/02/17
KEI
轢き逃げの検挙率は90%だそうだが、検挙されず時効を迎えた時の家族の思いを描いたファンタジック・ホラー。12年前に夫を轢き逃げされた妻・久子には、17年前に轢かれた上に殺され幽霊となった政子が見えるという。轢き逃げ事故や公訴時効で無念な思いを1つのテーマとして内容は重いが、重く感じないのは久子と幽霊の政子の同居という、あり得ない設定だ。いくら罪にならぬとはいえ【罪を償う機会を与えられない限り、罪を犯した人間自身救われない】というサブテーマが展開し読後は暖かい気持ちと切なさを感じて一気読みさせる小説だった
2023/11/15
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