巨鯨の海 (光文社文庫 い 49-3 光文社時代小説文庫)
巨鯨の海 (光文社文庫 い 49-3 光文社時代小説文庫) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
同じ海を生き同じ方言を使う、人と鯨の命懸けの真剣勝負。己の命を捨てても守りたいモノの為、人も鯨も叫び哭く!鯨漁を生業とし、代々技術を磨き抜き生計を立てる専門集団。莫大な富を得、役人も迂闊に手を出せない治外法権。内部に統制のための厳しい掟があり、皆が命を懸けて組織を維持する。一方で命を懸ける鯨の描写もリアル。まず途方もなく巨大!命懸けの親の愛情があり我々と変わらぬ息吹もある。鯨の嘆願、叫びが涙を誘う!文字だけで見せる圧倒的な映像美。命の限りを尽くして戦う両者と鯨漁の栄枯盛衰。全話に感動と切なさが残る‼️🙇
2020/07/28
岡本
捕鯨で有名な太地町が舞台となっており、江戸時代末期から明治にかけて捕鯨で生きる集落の人達の短編集。捕鯨という特殊な産業で生計を立てている漁村では、他の集落とは異なる独特な社会が築かれており、読み進める毎に問題点が浮き彫りになっていく。最終章では時代の流れに巻き込まれて捕鯨産業自体が成り立たなくなっていく様が書かれており諸行無常を感じる。文化としての捕鯨に興味が湧く一冊。
2021/04/18
紫 綺
単行本にて読了。捕鯨シーンが目に浮かぶようなド迫力だった。
2017/02/11
ふじさん
江戸時代、紀伊半島の漁村・太地は、磨かれた技を駆使し集団で鯨に立ち向かう「鯨組」が存在し、仲間との強い絆と厳しい掟により繁栄を極めた。そこには、鯨にも畏怖の念を持って立ち向かう漁師がいた。江戸末期から明治へ、太地の鯨組の共同体としての栄枯盛衰を躍動溢れる筆致で描いたクロニクル。鯨との死闘は迫力満点で読み応え十分。「恨み鯨」は、病気の母親を救うために禁を犯す少年の物語が切なく心に染みた。「決別の時」は、捕鯨に嫌悪感を持ちながらも、家族の幸せを考え、刃刺しの道を選ぶ男の苦悩を描いた作品。2作が特に心に残った。
2023/02/05
のぶ
捕鯨に関する6つの短編を集めた作品集だが、どれも男たちの熱い息吹が伝わって来るものばかりだった。和歌山の太地。時代は江戸後期から明治にかけてで、どれも鯨との闘いが描かれている。各物語に出てくる人々は命がけで、その漁法や鯨の種別による特性が細かく記載されており勉強になった。現在、捕鯨に対しての風当たりは厳しく、商業捕鯨は難しい状況にあるが、これを読むと、古来からの文化であり、生活の手段であることが良く分かる。どの話も短編として収めておくのがもったいないような充実した作品集だった。
2018/06/12
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