ミストレス (光文社文庫 し 20-4)
ミストレス (光文社文庫 し 20-4) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
5つの短篇を収録。篠田節子氏は、いろいろな小説作法を持っているが、今回は翻案小説を試みている。篇中の「宮木」がそれだ。原典は、それ自体が翻案小説集である『雨月物語』の中の1篇「淺茅が宿」。プロット自体が原典をなぞる上に、宮木(夫の帰りを待つ主人公の妻)、主人公の名前の勝太郎(原典では勝四郎)と、これでもかというくらいに原典を示唆している。ここに収められた作品は、概ねホラーと官能が共存するのだが、一見両立しそうもない、こうした要素が共存しうるのは、『雨月物語』や、中国白話小説の『牡丹燈記』が既に証明済みだ。
2018/12/28
じいじ
『秋の花火』『銀婚式』など読んで面白かったので、数点積んだ篠田節子。その中から『ミストレス』を選んだ。タイトルと妖艶な麗人の装丁に魅せられて…。ホラー&ミステリーの幻想に渾然と官能シーンが練り込まれた短篇集。読み手を引き込む文章力はさすがに巧いです。さて、好みの評価は、読み手によって分かれる作品のように思う。個人的には、表題作と5編目【紅い蕎麦の実】を除いては、途中下車した。どうも私には、相性が合わない作品でした。解説で作家・窪美澄(好きな作家)が激賞していることを、敢えて書き添えておきます。
2018/01/29
アッシュ姉
大人向けの短編五編。個人的に合う合わないのある作家さんですが、合わない方を選んでしまいました。どれも身勝手な人間が現実と幻想を彷徨うような話で、同情の余地なしというか、どちらに転ぼうが興味を持てず、ちょっと退屈でどんよりしてしまいました。う~ん、ぶたぶたさんに癒してもらおう!
2017/07/28
巨峰
5つの短編。発酵した官能のようなものを感じる。不思議と既読感あるんだよなあー
2021/01/11
鶏豚
恍惚で少しの狂気、甘やかな悲しみを帯びながらも決して上品さを失わない、5つの短編集。官能的な描写は各短編に描かれているが、人物像を掘り下げるための必要最小限に留め、揺れ動く内面を克明に仕上げていく過程はお見事。皆さんの感想と酷似するようだが、「紅い蕎麦の実」のラストの余韻は秀逸。「ミストレス」は情交を散りばめながらも幻想的、気品が保たれ、こういう作品は好き。普段は気にしないが、表情の分からないエレガントな女性の表紙写真は本作にピッタリ。(3.5/ 5点中)
2021/10/21
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