神様のケーキを頬ばるまで (光文社文庫 あ 58-1)
神様のケーキを頬ばるまで (光文社文庫 あ 58-1) / 感想・レビュー
しんごろ
5編からなる連作短編。どの短編も、家庭の事情、恋など、これから前へ進もうとする一歩手前で終わるんですが、そこまでの過程がすごく良かったです。自分も何かに挑もうとする時は、どうなるかわかりませんが足掻いて、もがいて、前に進んで行こうという勇気をくれました。作中にででくる賛否両論の映画『深海魚』が気になりますね。
2019/10/19
さてさて
私たちが暮らす街にはさまざまな建物が立ち並び、その中にはたくさんの人々が働いています。そして、そこに働く見ず知らずの人々にもそれぞれの人生があり、それぞれの暮らしがあるのです。この作品ではそんな市井の人々の生き様が五つの短編にわたって描かれていました。ひとつのビルに関係する人々が見事に繋がっていく様を見るこの作品。そんな見ず知らずの人々にもそれぞれの悩み苦しみがあることに気づくこの作品。切なさと優しさがそれぞれに感じられる物語の中に、人の生の営みの愛おしさに胸を熱くさせられた素晴らしい作品だと思いました。
2023/10/08
馨
初読み作家さんでした。短編集で、どの話も主人公は違えど場所が同一です。表紙のパンケーキもちゃんと出て来て納得。パンケーキが食べたくなりました。読みやすいのですが全作品ともに暗めなので私にはあまり会わなかったけど、随所に明るくて前向きな脇役たちがいるのがよかったです。出会う脇役たちの言葉に奮起したり気づかされ主人公が前進していくので、私も日々出会いを大切に、関わりのある人たちの言葉を真剣に聞くようにしようと思います。
2018/02/11
しんたろー
錦糸町の雑居ビルを舞台にした5つの物語。世代も性別も違う5人を主人公に、脇役の人々も見事に書き分けて「ままならない現実に足掻く姿」を描いている。情景描写や台詞がスッと頭に入ってくる文章は私と相性が良いのか、全くストレスを感じないのが嬉しい。登場人物の誰もが嘘臭くないので、素直に共感しながら、行く末が気になって読み進めた。スッキリとした結末ではないが、微かな希望を抱かせて終わっているのもニクイ!各話の繋がりも無理がなく、彩瀬さんが本作を書いたのは20代だった筈で「才能がある人なんだな」と羨ましくも感心した。
2019/02/14
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
彩瀬まるさん初読み。錦糸町の雑居ビルと「深海魚」という架空の映画を共通項にした5つの人生の物語。連作短編、というのとも少し違う、こういう短編集は初めてかも。それぞれの傷が、いたくていたくて少し目を背けたくなるような。そっと寄り添いたくなるような。みんな柔らかくて傷つきやすい部分はそっと胸の内に秘めてる。傷つけられたくない。でも分かってほしい。「七番目の神様」の店長と畑のおじさんと、ズカズカ入ってくる常連の藤原さん。なんか好きだなあ。あと「光る背中」のぎゅっと迫る弱さも好き。幸せになってほしい、みんな。
2019/03/09
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