つばき (光文社文庫 や 29-2 光文社時代小説文庫)
つばき (光文社文庫 や 29-2 光文社時代小説文庫) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
私が浅草を舞台にした前作『だいこん』を読んだのは2009年の9月のこと。もう九年近く前のことだ。気丈で凜とした生き方をするつばきは健在です。そしてそうしたつばきを周りから応援する人情も深川においてなお深まったように思える。こうした人情噺が描く価値観は多くの日本人が心の奥底に持つ原点であろう。フィクションでありながらつばきの幸せを願わずにいられない。惜しむらくは深川で店を始めた頃、大店の木島屋を騙って大口の注文をしたいきさつが拡がりを持って描かれなかったこと。意外な真実が隠されていたらさらに楽しめたのだが。
2018/05/06
タイ子
前作の「だいこん」から数年経っての続編だったので読み進むうちに思い出してきた感じ。 でも、一力さんの文章には生きていく上での覚悟が優しく、厳しく書かれていて清々しいから好き。 この作品の主人公一膳飯屋「だいこん」のつばきも飯屋としては繁盛しているも、「出る杭は打たれる、出ない杭は踏んづけられる」と聞かされ商売の厳しさを知っていく。 人は誰でも一人では生きていけない、そのためには何をすべきか…。そんなことを改めて感じさせてくれた作品です。
2017/10/07
tengen
「だいこん」の続編。☆メシ炊きが評判を呼び十七歳で一膳飯屋「だいこん」を構えたつばき。浅草から深川に店を移し、新たな地でも地元に喜んでもらおうと願うのだが。弐蔵から、深川では出る杭は打たれ出ない杭は踏みつけられると忠告を受ける。そして豪華弁当二百食の空詐欺にあう。それでも廻船問屋木島屋の信頼を得て深川に根を張ってゆく。そんな矢先に棄捐令が発布される。普段御大身気取りの札差屋が痛手をくらい、留飲を下げる江戸の庶民ら。だが札差たちの豪遊あってこその江戸景気であったのだ。つばきは迎えるべき不景気に覚悟を定める。
2024/10/21
jima
深川編。「出る杭は打たれる。出ない杭は踏んづけられる。」か。日常を忘れて、江戸の世界に入り込める作品。続編があるそうだ。
2017/12/08
蒼
浅草から深川に移り新たに「だいこん」を開業したつばき。廻漕問屋からの弁当百個の大口注文の詐欺にあったり、札差への幕府の棄捐令にまつわる貴重な情報を、つばきの人柄と気風に惚れ込んだ番頭に伝えられたり、何より長い付き合いの弐蔵が影に日向につばきのための影働をしてくれる。江戸っ子の張りと粋と見栄を存分に発揮するつばきを、たくさんの人が支えてくれる。「慌てずうろたえず、時期の到来を待てばいい」木島屋頭取番頭の言葉を実践した後に、つばきはどんな生き方を選ぶのだろうか。次巻が楽しみだ。
2020/05/14
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