フェイク・ボーダー 難民調査官 (光文社文庫)
フェイク・ボーダー 難民調査官 (光文社文庫) / 感想・レビュー
absinthe
重大事件が起こるわけではないが、難民調査官の地味だが堅実な仕事がリアルに描写される。ミステリとしては力が弱いし謎もイマイチな気はするが、そこは読みどころではない。うっかりした誤断が国際問題を引き起こすとなれば気が抜けない。誤って本国へ送還すると処刑されてしまう危険があるが、うっかり難民認定させるとテロが入国してしまう。世界がいま同じ問題に苦悩しており、日本もまたその最前線になりつつある。そういった重圧が描かれている。
2019/08/29
H!deking
読友さんから頂いた一冊。うーん、訴えたい事はわかるし、決して面白くない事は無いんだけど、なんだろ、何かが足りない。難民とかの問題提起が重すぎるのかな。もう一捻り欲しかった。
2019/09/30
のり
大半の日本人は恵まれた環境で迫害や命の危険に晒される事はないと思う。難民調査官の「如月」や「高杉」はクルド人難民の調査を始めたが、国籍の壁や複雑に絡む事情で思うように進まない。世界レベルでみれば日本は難民を受け入れた事例が極端に少ない。ヨーロッパ諸国では多く受け入れてはいるが、一部のテロリストの脅威で軋轢を生む。戦争や部族間抗争。主張を絶対正義と捉え、武力に傾倒するのでは平和は永遠に訪れない。多くの事を考えさせて頂いた本作に感謝。
2019/12/24
五右衛門
読了。題材が良いのか作風が良いのか。兎に角読まされてしまいました。初めまして位に知らなかった職業のお話で、とても難しい職業ですね。そもそも不法滞在、避難民等の区別すらなく凄い驚きの連続でした。その中でテロに絡めてのミステリー、割と高度な外交問題が絡んでおり落としどころが心配になりましたが何とか決着しました。ひとつ間違えれば家族全員が強制国外退去になっていてもおかしくない状況でした。これからも目が離せない作家さんです。これの続編は当然、他も読んで行きたいです。
2020/12/22
owarai
誰が決めたか、世界には当然の如く国境という名の見えない線が引かれ、国家が形成されている。成熟した世界に見える現在でさえ、人類が皆、突然に叡知を授かる事でもない限り、国境を越えて世界がひとつになる事は難しいだろう。では、国の保護さえ受けられない「難民」の行き先に、幸せは待っていないのか。下村氏は本書で、難民問題を取り上げる。互いを受け入れる為に、何が必要か。我々は、難民問題が決して対岸の火事ではない事を受け止め、考える必要がある。正義を妄信することは、異なる他者の排除に繋がるという事を肝に銘じる必要がある。
2019/08/09
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