モーツァルトの息子 史実に埋もれた愛すべき人たち (知恵の森文庫)
モーツァルトの息子 史実に埋もれた愛すべき人たち (知恵の森文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
歴史に埋もれていた30人の掌編伝記集。案内人は、読書とエッセイの手練れ池内紀氏。本業はドイツ文学者だ。彼が「読書の裏通りで出くわした人々」を愛惜を込めて語る。表題作になっているモーツァルトには4人の息子(他にも2人の娘)がいたが、ここで語られるのは4男。残された肖像画とともに何だか寂しい人生だ。本書のお蔭で初めて知ったのは、ナイーフの画家ニコライ・ピロスマシヴィリ。そして、そのいさぎよさに感心したのは、17世紀スウェーデンの女王クリスティーネ。30年戦争を終結させ、10か国語を自由に操り、消えていった。
2016/09/24
傘緑
「キュルテンには幻覚といったものがあったようだ……その声は、まるで本当の声のようにはっきり聞こえたそうだ。一方の声は現実の声であり、もう一方の声は夢の声というのだ。『そんなふうに私は半身ずつ別の人間だった』」 割愛したがこの「デュッセルドルフの吸血鬼」ペーター・キュルテンの見た夢に似たものを後年ナチスは松明行列というかたちで実行することになる。その間を繋いだのはフリッツ・ラングの『М』だったのではないかと私は思う。話は変わるが、池内紀が書くとこの凄惨な連続殺人事件もここまで毒気が抜かれることに驚いている。
2016/08/29
mutuki
「歴史に埋もれた人々」についての本ということで、 さすがに知らない人ばかりだった。 モーツァルトの息子は、父親ほどの才能には 恵まれず、音楽家として少し可哀そうな人生だった。 今の2世タレントと同じ感じ。ぱっと出てぱっと消えていく 使い捨てされる程度の才能だったんだ。
2018/06/07
かどの炭
池内紀さんのエッセイということで、手に取った。変人奇人と呼ばれるような人々の人生を、さっぱりとした文章でまとめている。軽い読み物だが味わい深く、時折はっと胸をつかれた。 特に、グアテマラの「森の聖書」が、切なさと歴史の面白さを伝えてきた。
2019/03/25
bittersweet symphony
集英社が出ていた単行本は「姿の消し方 幻想人物コレクション」というタイトルで、内容的にはそちらのほうが正解。文庫版タイトルでは誤解して買ってしまう人が居そう。あとがきで著者も述べているとおり、各人の質よりも量を連ねることで知られざる人物の悲哀的な雰囲気を出す意図があるので、掘下げて知りたい人向けではありません。以下リストアップ、この本以外の情報がない人もちらほらでした。しかし長文すぎ。⇒http://mixi.jp/view_diary.pl?id=825676278&owner_id=388198
2008/06/02
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