シンポ教授の生活とミステリー (光文社文庫 し 50-2)
シンポ教授の生活とミステリー (光文社文庫 し 50-2) / 感想・レビュー
Tetchy
博覧強記のミステリ評論家として名高い新保氏のエッセイ集。彼のこれまでを俯瞰した場合、その時その時に依頼された仕事を一定の水準で器用にこなしてきた文筆家という印象を持つに至った。その膨大な知識を駆使して駄洒落やミステリ好きをニヤリとさせる造語を生み出す言語センスはこの人ならではあろう。個人的に「教授への長い道」が最も面白かった。これは新保氏がミステリ評論家になるまでの読書遍歴や道のりを記したもので、インターネット普及前の古本屋渉猟の様子などは私も懐かしさを感じた。書評は職人芸であると思わされた1冊だった。
2021/11/10
へくとぱすかる
ふっと目について衝動買いした。文句なくおもしろい。ダジャレが多いのが実は最も気に入った点。ミステリをネタにしたオヤジギャグはなかなか他では読めない。シンポ「教授」自伝の部分は、いかにして少年の頃からミステリに親しんだかがよくわかる。他人の読書歴とその思い出を読ませてもらえるのが、こういう本の醍醐味だと思う。ミステリ作家のウラ話は、初めて聞くようなものばかりで、ネタが新鮮。本の収納術については、そこまでよく思いついたものだと感服した。やはり多すぎる本をどうするかは、悩みなんですねえ。
2020/07/13
HANA
ミステリ編集者のエッセイを集めた一冊。とはいえ発表から多少時間が経っているのも多く最新のミステリの話題は少ないが、古典ミステリの味わいを知るにはこれ以上ない一冊。特に著者の自伝でミステリに目覚めた所以を読むと、やはり我が身に重ね合わせてノスタルジックな気分になるな。ちなみに自分は少年探偵団から入りました。あと読み応えのあるのは追悼文で、故人を悼みながらも著書の魅力も同時に紹介している名文で、触れられている各氏、特に鮎川哲也に笹沢左保の著書を読みたくなってくる。読みながらミステリ読みたくなる本でした。
2021/07/15
瀧ながれ
カルチャー教室でミステリ創作を教えることになってのあれこれとか、ミステリ小説とどうやって出会ってどんな感想を抱いたとか、逝去したミステリ関係者への追悼や、果ては翻訳ミステリの「訳者あとがき」がどれほど危険か、など、さまざまな雑誌書籍に載せられたものをまとめた一冊。国内外のミステリ(小説・作家・翻訳家・書評家・収納方法)がどかどか登場するので、勉強になるし読書欲もそそられる。江戸川乱歩の、あの名高い蔵の中に入ったハナシなど、描写が足りなくて、もっと詳しく語ってください!と襟首掴みたくなりました。
2020/09/15
本木英朗
京都の書店で名探偵ホームズの本を手にした九歳の少年シンポ少年。それが彼の運命を決定。中学・高校とミステリーの泥沼にはまっていき、悪魔に導かれるように上京、ワセダミステリクラブの門を叩き、同じ中毒患者たちと青春を過ごす。気が付けば評論家の肩書きが……という話ほか、本当にたくさんのことが書かれているこの作品は、とにかく読むしかないってば。さすがシンポ教授である。いっぱいあるけれど、ひとつ選べば、〈名探偵の系譜〉だろうか、俺は。デュパンから始まって中禅寺明彦まで、洋を問わずに書いてるのがねえ。
2020/08/02
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