蒼き山嶺 (光文社文庫)
蒼き山嶺 (光文社文庫) / 感想・レビュー
じいじ
昔、大学山岳部の三羽烏で鳴らしたの山男たちの物語。山岳ガイド・得丸と公安刑事・池谷の白馬岳での再会から幕が開きます。先日読んだ山岳小説・沢木氏の『凍』とは、ひと味違ったミステリー風な趣の山岳小説で面白かった。『凍』のヒリヒリとひりつくような緊迫感はないが、ハートフルで人間臭さに親しみを感じた。馳小説は、犬を主人公にした小説でトリコになって、その後アイヌ民族の老人と孫娘を描いた『神の涙』、そして今作で完全にハマりました。失礼ながら、厳めしい馳さんの風貌からは、想像できない温かさを小説を通して感じます。
2022/01/27
ずっきん
非ノワールの山岳もの。とにかく山と山屋を描きたくて書いたんだろうなあと思う。元山岳救助隊と現役公安。そしてヒロイン。ベタである。でもね、うわあ、面白い。止まらない。このベッタベタをぐいぐい一気に読ませるとこが、手練れの証。
2021/05/17
きょん
山に取り憑かれた人の思いが凄まじい面白い山岳冒険小説だった。池谷が日本海を目指すその理由が恐ろしくも切なく悲しい。仲間との信頼関係や才能への嫉妬は友情とはひと味違うほろ苦さ。舞台はほぼ雪山で登場人物も少ないのに最後の最後まで飽きさせず読者を引っ張るのは馳さんの筆力だろう。
2021/04/13
goro@80.7
白馬槍温泉から日本海まで嘗ては友だった男に欺かれながらも見捨てられずにある意味逃避行を続ける二人。一人は公安、そしてもう一人は山岳救助を仕事にする男。二人の友情はもう一度蘇るのかと全行程約40キロ、ゼロメートルまでの道行きに大学時代の仲間との回想シーンを織り交ぜて読ませる。少ない登場人物と最初から最後まで残雪の山の中。一度も下界のシーンは出てこない山岳だけの山岳小説。脚が前に出なければそれは遭難、死を意味するのだ。このラストにしたのはただひたすら山を書きたかったからだろうなと思った。
2021/07/22
森オサム
久々に山岳冒険小説を読んだ。物語は登場人物の現在と大学時代が交互に描かれる。どちらもほぼ山の中の話で非常に辛く苦しいが、美しい情景、友情の描写には胸が熱くなる。こんなに偶然旧友や関係者が山中で出会うのは、何かのお導きという事にしておきますが、会えば一気に学生時代の関係に戻るのは羨ましい事ですね。頑固者ばかりで融通が利かない人達でしたが、冬山をやるにはそれくらいの気骨が必要なのかな?、息苦しい読書でしたが楽しめました。真夏に読んだのは季節外れでしたけど(笑)。
2023/08/31
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