修禅寺物語 新装増補版 (光文社文庫)
修禅寺物語 新装増補版 (光文社文庫) / 感想・レビュー
たま
「玉藻の前」「修善寺物語」に「番町皿屋敷」を加えた2021年7月21日発行の新装増補版。この時期に新版を出したのは、来年の大河ドラマにあやかるためらしいが、古さを感じさせない綺堂の文章のファンが多いということでもあろう。玉藻伝説を知らなかったのでネットで検索したら、妖怪ウォッチにゲームのキャラ、創作バレエと転生して御活躍中だった。玉藻は関白家では超自然力を使わず、イアーゴーのように2枚舌で人を操り破滅させる。そこは心理小説的なのだが、狐に憑かれた少女の内面の苦悩は描かれないのが伝奇小説たる所以かと思う。
2021/11/11
ホシナーたかはし
改めて。文庫サイズ、文字も小さくないし厚みもない。なのにとんでもない情報の質と量!最初の「玉藻の前」で満足・お腹いっぱいになってしまいます。最初、脳内でFGOなのに、読んでいくうちに藤田和日郎先生のキャラ(千枝太郎のまゆは太く、玉藻の目はアレ)で動いてしゃべる。「番町皿屋敷」怪談ではなく原典のほう。時代とはいえ、男側に優位で都合の良い話。タイトルにある「修善寺物語」は知らなかったので読んで良かった。
2022/03/15
みゆき・K
表題作のほか二作品。2/3を占める「玉藻の前」は壮大な和風ファンタジー。時は平安朝末期。妖狐に憑かれた美女と幼なじみの陰陽師の悲恋を軸に、権力闘争と人間模様を描く。「ハリー・ポッター」を二度挫折した私を虜にする軽妙な筆致。「修善寺物語」→私にとっては夜叉王が主役。彼は父親ではなく職人だった。「番町皿屋敷」→お馴染みの怪談を純愛ものに仕立て直している。男気のある播磨がいい男で、お菊じゃなくても惚れる。他に類を見ない美しい文章で、鮮やかに広がる情景を堪能。岡本綺堂は天才だ。光文社のシリーズ中ベスト1。
2022/09/08
Kotaro Nagai
玉藻の前、修善寺物語、番町皿屋敷の3編を収録。「玉藻の前」は中公文庫版にて既読。「修善寺物語」と「番町皿屋敷」は、戯曲を著者自身が小説化したものを収録。「修禅寺物語」は、修善寺に幽閉された鎌倉幕府2代将軍頼家に題材を取った作品。修善寺での頼家と面作りの娘のエピソードと暗殺されるまでの頼家の心情が描かれる。「番町皿屋敷」は、怪談を描くより主人の旗本青山播磨と腰元のお菊の情愛に焦点当てたところが綺堂らしいくユニーク。
2022/06/03
本のロマンス
鎌倉時代は武士の世の中、問答無用の残忍さや。北条の夜討ちにあい非業の死を遂げはった源頼家殿、哀れどすのう、儚いのう。その運命が、面職人「夜叉王」の彫った頼家殿の仮面に死相として顕われていた・・・さもありなんや、神のなせる技とはこのことやろ。
2024/07/06
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