焼跡の二十面相 (光文社文庫)
焼跡の二十面相 (光文社文庫) / 感想・レビュー
coco夏ko10角
1945年8月、敗戦後の焼跡となった東京で明智探偵の帰りを待っている小林少年、ある日二十面相からの犯行予告を発見し…。辻真先先生なので当時の様子がリアル。仕掛け、暗号、変装…小林少年の冒険活劇面白かった。続編も楽しみ。
2022/06/29
alleine05
微妙。前半は『二十面相』や『少年探偵団』というより戦後の日本の姿を描くことの方がメインな印象で期待していたのとは方向性が違っていた印象だったけど、中盤以降は、暗号解きあり、宝探しありでいかにも『二十面相』ものらしいと感じられる展開だった。しかし文章がどうもなじみづらいというか、すっきり頭に入ってこなくて素直に楽しめなかった。終盤の展開は読者サービス旺盛だとは感じられるのだけど、さすがにやり過ぎじゃないかなという気も。
2021/12/07
hatohebi
明治の伝奇化は山田風太郎が先鞭を付けたが、昭和の伝奇化において、昭和アニメ史に文字通り伴走した辻真先氏はうってつけの作者だと思う。戦後間もない明智不在の東京を舞台に、明石子爵家の財宝を狙う悪党と小林少年の活劇。物語の合間合間に、戦後日本の奇妙さ・ちぐはぐさが書き込まれる。「終戦」「進駐軍」という新造語など、今の時勢と重ね合わせているんだろうなあと感じる。輪タクの密室、暗号解読、宝探しなど、探偵小説らしいイベントを矢継ぎ早に展開して最後まで引っ張るスピード感に楽しませられた。最後までサービス精神がある。
2021/12/15
びぜんや
何十年ぶりかで読みました、辻真先。作風は昭和から平成を経て令和になっても変わってませんねぇ。あ、ちなみに“元ネタ”はたぶん未読です。「焼跡」のディテールをさも昨日見てきたかのように描けるのは同時代を生きてきた作者だからこそ。その描写に重きを置きすぎてる印象はありますが、それでも大仕掛けあり、逆転あり、もちろん変装ありで快活な冒険活劇としての面白さは十分に備えています。ラストにはニヤリとさせられるような小ネタもあってサービス精神旺盛で、お腹いっぱいになりました。5つ星。★★★★★
2022/03/03
UPMR
乱歩の少年探偵団がドンピシャの世代ではないので微妙に刺さらず。ジュブナイル風の色合いでテンポよくポンポン展開し、連作短編に仕立てることもできるくらい随所に山場が仕込まれ退屈はなかったが、その分、各パートの小ネタの扱いがだいぶあっさり。作者の性質としても、本格ミステリ寄りの志向を重視しているので伏線が丁寧で分かりやすく、サプライズはむしろ伏線なしのどんでん返し系のネタのほうが面白く感じられた。戦後の日本の光景を物語る描写は平易な文章ながらもヴィヴィッドで、作者自身の体験が如実に生きてきているのかなと思った。
2021/11/06
感想・レビューをもっと見る