李朝残影 反戦小説集 (光文社文庫)
李朝残影 反戦小説集 (光文社文庫) / 感想・レビュー
樋口佳之
表題作と「族譜」が記憶に残りそうです。植民地を取り、そこで宗主国側の人間として暮らす日本人という、今ではまあ想像がつかない状況を考える事ができました。
2023/01/14
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舞台は植民地統治下の京城。どれも主人公は日本人。日本人がいかに近傍しても、朝鮮人のその心にある感情、意図に到達することはない。できると思い込むのは傲慢な誤認である。朝鮮人と日本人の立場の違いや思想の違いを浮き彫りにして、民種を越えた心の繋がりがありながら、合間みれる事の出来ない民族的な矜持をみる。自分は差別なく人としてぶつかっていると奢れる日本人、結果として、彼ら朝鮮人のその真の胸の内を見る事となった主人公達は、驚愕し心突き落とされる物語群でした。
2022/12/07
Masakazu Fujino
1930年、植民地統治下の朝鮮京城(現在のソウル)で生まれた著者、梶山季之。父は朝鮮総督府の官吏、母はハワイオアフ島に生まれ、少女時代に日本に引き上げてきた女性だった。彼の家族は植民地朝鮮を追放されると、原子爆弾で破壊されて間もない広島で生活を始める。そんな中で著者は朝鮮を舞台に日本人と朝鮮人の関わりをテーマにした小説を書いた。梶山は植民地にあって日本人が統治者側に立っていることの優位性に自覚的であった。日本人であることの後ろめたさ。罪悪感と無力感。そうした日本人の状況を梶山季之は描いている。
2022/10/27
なかすぎこう
戦争終結時に朝鮮にいた日本人ってこういうのだったのね、と如実にわかる。「引き揚げ」という言葉は生ぬるい、もし自分が植民地の支配者側の人間だったとして、それが突如何も知らされないままある日終戦となり、支配者側と被支配者の人たちとが入れ替わったとしたら・・・。それは恐いでしょう、どうしたら良いかわからないでしょう。また、30年もの間支配していた朝鮮で日本人がいかに「ぬくぬく」と過ごしていたががよくわかる。朝鮮の人々をどう見るのが当たり前だったか。自分もそうなりそうなので、それが恐い・・・。
2022/10/23
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