ロンドン狂瀾
ロンドン狂瀾 / 感想・レビュー
KAZOO
この作者さんは初めてなのですが、ロンドン海軍軍縮会議というあまり話題にならないけれどその後の日本の軍部がある意味表面に出てくるようになったその会議がある意味主人公となっています。外務省の情報部長を狂言回しにして、そのなかでの実在の人物たち、浜口雄幸、幣原喜重郎、若槻礼次郎、吉田茂などがうまく活写されています。結構ページ数のある本でしたが、あっという間に読めてしまいました。城山三郎さんの作品を思い出しました。
2018/10/17
チェアー
大作で時間がかかった。1930年代は経済、政治、軍事ともに多くのことが起きて、流れがつかみにくいが、この本を読めばある程度の流れは分かるようになりそう。登場人物のキャラクターも立っているし、それぞれの思想、行動もわかりやすい。全権を握り至高の存在である天皇に、いかに政治的判断をさせないかに腐心する「臣下」たちの姿はむしろコミカル。君臨しているはずの天皇を、実際には利用しつくしていたわけだ。それにしてもロンドン軍縮会議をテーマに据えるという、そもそもの発想がすごい。
2016/04/12
乱読999+α
1930年ロンドンでの英・米等との軍縮協議から日本国内での条約批准までの外交官の活躍と苦難の道を膨大な資料に基づき詳細にかつ大胆な発想で書かれた歴史小説。そして天皇の統帥権干犯問題をもって政党政治の崩壊、軍部の暴走、テロの横行、第二次世界大戦に突き進む当時の世相を詳細に綴っている。そこに至る原因の一つはやはり人間の持つ色々な欲望だろう。体面、自己保身・顕示、出世、金銭等が複雑に絡み合い無謀な行動を引き起こし、日本の将来を見誤った。硬質な文章で実に読み応えが合った。今の日本が当時の轍を踏まないことを願う。
2016/12/21
mushoku2006
しぶいテーマをチョイスされたと読みながら思っていたんですが、そうか、これが統帥権干犯問題につながり、そして、以降の日本は坂道を転げ落ちてしまったからなのか。それに触れられるまで気が付かなかった私もアカンな。日本史が得意だなんて言ってられない。統帥権干犯問題については、美濃部博士が完璧に回答を示していたように、後世の人間には思えます。そして、当時の日本の財政は、米英の銀行家に国債を買ってもらって何とか成り立っているという状況だったんだから、この軍縮条約交渉で決裂するという選択肢は最初からなかったんだな。
2016/03/21
みろ
教科書では1行で終わるロンドン海軍軍縮条約かの締結から批准までをめぐる外務官僚、政府、海軍軍人たちの動きを丹念に描いた作品。登場人物は多いけど丁寧に為人、経歴等を書いてあるので理解しやすく読み進められた。当時の日本の政治中枢についての描写もわかりやすくて、この時代以降の日本がなぜ軍部暴走に歯止めがかからなかったのかについても示唆されていたが、納得できるものだった。
2016/03/23
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