狐と韃 知らぬ火文庫
狐と韃 知らぬ火文庫 / 感想・レビュー
🐾Yoko Omoto🐾
平安初期に仏教の教えを元に書かれ伝承された日本最古の説話集「日本霊異記」を、物語としてより読みやすく朱川流に脚色した奇跡や怪異の物語八編。「貪欲を生じ瞋恚(怒り)をおこすことも、その源をいえば、みな愚痴(愚かさ)より出でたり」とは煩悩の三毒の根源とされるが、古今東西人が人で有る限り、煩悩というあらゆる欲望とは決して無縁では生きていけぬもの。現代とさして本質は変わらぬ古代人に遠い古との繋がりを感じ、つい思いを馳せてしまう不思議な感覚に襲われた。そして性的な欲について描かれた話が多いこともまた印象深い。➡続
2018/02/01
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
蛇と交わりたい夜に私は桑の木から落ちました。求められることを求めるのはまだ蛇をしらないということ。鳴いてしまう哭いてしまう悦楽に、天にむかってほえた狐の目はあおくてかなしいなあとおもっていると背徳の思いで身ごもった。美しさを欲する女が自分の蛇をさがすけれど、私がさがすのは違う理由です。じんわりと熱くなるからだ持て余してここはくらやみのくに、父は私の頸切り落としたいのでしょう。代わりに落として差しあげます。私はまだ森のなかに蛇をさがしたい。
2020/08/22
モルク
朱川さんの作品であるが、昭和ノスタルジーものではない。日本最古の説話集「日本霊異記」をベースに朱川さんが読みやすくアレンジした短編集。ホラーではないが、異形のものを扱った不思議系である。しかし、確かに背景に仏教観を感じるが決して押しつけがましいものではなくさらりとしている。「蛇よ来たれ」のエロチックさにはどきりとした。でも平安時代の人の名前はどれも読みにくく覚えにくい!
2017/12/31
naoっぴ
あーそうだ、昔の日本人って性に対して大らかな民族だった!と気づくようなオトナな日本昔話。もともとの日本霊異記はよく知らなかっただけに新鮮な気持ちで読んだ。どこまでも欲を捨てられない人の業が朱川さんアレンジで妖しく描かれ、中でも表題作や蛇の話などの愛欲ものは印象的。「こどもはみちゃだめ!」ってほんとにねぇ(笑) その中で「夜半の客」は編纂に悩む景戒の不思議な体験を描き、清々しくいい話だった。
2018/09/05
Rin
【図書館】もとは日本霊異記という書物らしいけれど、その存在を私は知らなかった。仏の教えを知るための不可思議な体験談。不可思議だけではなく、愛憎もあれば淫らな欲求も、嫉妬心も赤裸々に綴られている。狐と鞭も、読めばそういうことか、と納得。獣との間の子に、不思議な成長を遂げた子。印象深いのは「蛇よ、来たれ」に「夜半の客」。個人的に好きだったのは「塵芥にあらず」と「舎利菩薩」。日本霊異記はどれほど多くの説話が記されているのか。自分の住んでいる、訪ねたことのある地域の物語があるのかな、と知りたくもなった一冊でした。
2018/11/25
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