雲の果
雲の果 / 感想・レビュー
utinopoti27
江戸の夜を朱に染める火事、焼け跡からは女の刺殺体。焼け残った帯の切れ端から事件は思わぬ方向へ・・。「弥勒シリーズ」は、事件の謎を解く捕物帳的側面はありますが、何と言っても信次郎、清之介、伊佐治の絶妙なバランスが生命線。本作は、その辺がより強調された印象です。人の暗部を嗅ぎ分け、徹底的にさらけ出すことに無上の悦びを感じる同心・小暮信次郎と、冷徹な暗殺者の過去を持つ小間物問屋の主・遠野屋清之介。二人の剣呑な関係が、ひりつく緊張感を演出します。あっさり目の事件とは対照的な、執拗に粘りつくような文章もまた良し。
2018/08/15
ALATA
「私の望みは木暮さまの最期を看取ることです」「おもしれえ、とんだ絵空事だな」清之介と信次郎。心の闇を掬い取るような心理戦にひりひりする。半歩ほど後退り、頭を下げる。その所作で相手をかわす「間合い」とる“お芳“。牡丹でも百合でもなく「直ぐな木」に狼狽える伊佐治も相変わらずいい味を出している。おもしれえ★5※「私は遠野屋さんのようになりたかった」商いは生き物だ。苦労も楽しみもまだまだ続く…
2022/11/16
タイ子
弥勒シリーズ第8弾。相変わらず全編に漂うヒリヒリ感が何とも言えません。普通に書けば何ともない文章でも、あさのさんに掛かれば刃の先が胸先に突き付けられてるような(おっと、これもあさのさん流でしたね)。小暮信次郎、遠野屋清之助、伊佐次親分、三人三様に対する思いが同士なのか、親友なのか、はたまた敵なのか。この表現が事件の謎を追いながら美文にてずっと書かれるので人によっては辟易するかもしれない。でも、私はいつもこの表現に惹かれる。今作も人の裏と表を上手く謎めかして妖しい世界に連れて行ってくれました。面白いです。
2018/12/04
初美マリン
このシリーズの主人公達は、ただの信頼関係ではなく、憎みあっているのでもなく、深いところで交差している。ただなにもないような人生でも、みなそれぞれに背負って生きてきたことだけは、確かなことです
2018/08/14
万葉語り
シリーズ8冊目。始まりが妖しく、杳として知れない女の身元に木暮様の心の内。遠野屋さんでは華やかな廉価会が開催されるものの、木暮様が招待した女はなんだかその場の華やぎにそぐわない。いろいろと掛け違ったボタンがきちんと整えられたとき、現れた羽馬織の真実がなんともいたたまれず、なかったことにしてしまいたくなる。おススメです。2019-021
2019/01/28
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