無暁の鈴
無暁の鈴 / 感想・レビュー
いつでも母さん
人である限り欲からは逃れられない・・宗教は人の心の拠り所なのだ。今も昔もどんな団体にも序列や柵はある訳で、それは『宗教』の世界でも同じなのだろう。その名は無暁、壮絶な生涯はその身を以て『即身仏』に行きつく。それにしたって西條作家、情とか憤りとか実に巧いなぁ。世相を絡めてこれでもかと無暁を試すよね。二人の弟子の鈴の音が哀しく響いて読了後はちょっと放心。そしてカバーの蓮すらも切なかった。
2018/06/06
はる
一人の僧となった男の波乱の半生。とにかく辛く悲しい出来事ばかりで読んでいて苦しいが、それでも彼が掛け替えのない友人や愛する人と出会い、絆を深めていく場面は感動的。作者の宗教感が強く提示された作品だが、終盤は特にその印象が強い。崇高なはずの仏教の世俗的な欲を描き、達観したはずの僧の弱さを描く。聖人の物語ではなく、極めて人間的な、一人の男の苦難の道程。
2018/09/11
雅
静かな環境でじっくりと読みたい作品でした。生きていくのに、他人の存在がいかに重要か教えてくれた
2018/05/29
あも
うん、すごい。そして、この凄さを説明する言葉を持たない。江戸時代、武家の庶子=厄介者として寺に入るも、惨憺たる出来事に絶望し、出奔。ヤクザ者となり島流しに…と、波乱万丈の人生を送った"無暁"。今よりずっと生きる事そのものが苦しかった時代。そこにも、喜びがあり、怒りがあり、哀しみがあり、楽しみがあった。小難しい説諭ではなく、一人の人間の生ききる姿そのもので、生とは?信仰とは?を見せられた。彼の行き着いた先を、理解しなくていい、共感もしなくていい。ただ見届けてみて欲しい。言葉に出来ない深く長いため息が漏れる。
2019/02/02
紫 綺
無暁が流された八丈島のくだりで終わってくれていれば、こんなに苦しく哀しい思いをせずに済んだのに。最期は即神仏となり生涯を終える、若き僧の成長物語。人との繋がり、命の尊さが心に染み入る秀作。
2018/08/18
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