向日性植物
向日性植物 / 感想・レビュー
アキ
台湾のレズビアン小説。台湾で2016年に独立系出版社から刊行され、1万冊を超える売れ行きとなった。主人公が高校生の頃、先輩・学姐と恋に落ちた。しかし台湾大学に入学した小莫と学姐が付き合うようになり、私も違う彼女と付き合い始める。社会人になり、数年して学姐から小莫が入院したことを知らされる。遠周りをしてラストに学姐とまた巡り合うことに。90年代の台湾ではレズビアンは自死と結びつけられていた。2019年アジアで初めて同性婚法制化が実現するまで、著者もまた何度も街に出てデモに参加した。訳は芥川賞作家・李琴峰氏。
2022/12/11
松本直哉
生きるには醜悪すぎるが、死ぬには美しすぎるこの世界で生き延びるために、小さな希望の光を求める向日性植物のような女性たちの物語は、卒業式で第二ボタンをやり取りして終りの一過性の熱病ではなく、大学のレズビアンサークルやパレードへの参加を通じて深められ、別れと再会を繰り返しつつ更新されてゆく。プールで制服がびしょ濡れになったときに先輩の制服を借りて彼女の匂いに包まれる場面が印象的。日本と台湾のレズビアン文学に精通した訳者の解説はすぐれた比較文学論になっている。この世界の本質に適合しない、それでも生きる決意の潔さ
2022/12/16
PAO
「まず唇を尖らせ、これからキスをするというふうに、学(シュエ)、と発音する」…全編が恋愛の恍惚感と戸惑いに溢れた溜息の様な私的で詩的な一冊。主人公に作者の屏瑶さん、《学祖》に訳者の琴峰さん、二人の李さんの面影を勝手に思い浮かべながら巧みな言葉で綴られる美しく切ない愛の世界にゆっくりと酔いました。琴峰さんがあとがきで触れている綿矢りささんの『生のみ生きのままで』が愛した人が女性だった女性の開かれた物語とすれば、本作は女性しか愛せない女性の閉じられた詞華集と言えるでしょう。どちらも私にとって愛すべき作品です。
2022/09/28
いちろく
紹介していただいた本。台湾の女子校における女の子たちの恋愛事情から始まる物語。翻訳者が、李琴峰氏であったことから手にした一冊。先進的なイメージがある台湾でも、20年前では……と記載がある本書やあとがきからも想するに価値観の大きな変化があったのは近年。作品のジャンルをカテゴライズする時のレッテルに関して、諸刃の剣と述べつつも有用性を説き本書を「レズビアン小説」と記した著者や訳者の意志は重い。確かにカテゴライズすることで伝わることもあり、この件で他人がとやかく言うのはお門違い。訳者あとがきも含めて良かった。
2024/01/13
TSUBASA
女子校で一つ上の先輩学姐に惹かれる私。しばらく入院していた小莫先輩が学校に復帰し、少女たちの心は揺れ動く。繊細な少女たちは同性愛というマイノリティの不自由さを感じながら多くの人が解さない恋に落ちる。ジェンダーに関してとやかく言える立場ではないけれども、青春時代の恋愛感情が繊細な文体でつづられる。帯に書いてある「薫り高い翻訳」というのが成程感じ取れる文章だった。あとはあまりなじみのない台湾文化や当時の流行に触れられたのが良かった。『藍色夏恋』観てみたい。
2024/05/01
感想・レビューをもっと見る