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月の船でゆく

月の船でゆく

月の船でゆく

作家
長野まゆみ
出版社
光文社
発売日
1996-04-01
ISBN
9784334922672
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ジャンル

月の船でゆく / 感想・レビュー

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ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

ラ・ジテオの街にストーヴの匂いが立ちこめる頃、ぼくはティコを拾ってしまった。汲みおいた薄氷をふたりして口にふくんだ雪雲の朝、きみのあまりの儚さにたじろいで、計算高さに苛立った。雪のちらつく回転木馬に乗りたいと、ぼくに手を振って、ときみは言った。雪とともに舞うきみは、きっと刹那に消えるだろう。 いつの間にきみが隣をあたためて、ふたりの冬はやさしいから。もう、きみのいない冬など考えられないと、きみの正体など、気にしないと決めた。月の船の旅はもう終わり。さあ、家にかえって一緒にココレットとマシュマロをのもう。

2019/12/03

優希

冬の物語であるせいか、冬ならではの冷たくもあたたかい空気感があります。寂しさを抱えて冬の寒空の下、彷徨う孤独が切ない。ただ誰かの側にいたいために漂い、それをすくいあげる手が差し伸べられる。張り詰めたような寒さの中で、優しさが灯火のように輝く瞬間が美しいと思います。全てが曖昧で溶けそうな雪のように感じられました。

2017/04/26

NAO

【月を愛でる読書会】『少年アリス』と同じぐらい好きな長野まゆみのファンタジー。月のクレーターと同じティコという名前でパパを探しに月から来たと言う少年と、気まぐれな彼女に振り回されているジャスの出会いとふれあい。それは、寒い冬の月のように清澄でありながら、あわあわとしている。ティコ何者なのか。それらしき暗示は二つある。そのどちらでもいいし、どちらでもなくてもいい。本当に寂しかったのは、ティコなのか。それとも、ジャスなのか。だが、静かで冷え込む夜も、二人でココレットを飲めば、ほっこり温かくなるにちがいない。

2021/10/26

mii22.

もちろん架空の国の話だけどどこか懐かしさを感じる居心地の良さ。あぁ、やっぱり長野ワールドいいなぁ。私が読んだ長野作品の中で17才の少年が主人公なのは珍しく、ジャスは少し大人の男の子で変な言い方だがとても人間っぽい。それに反して人間離れした少年ティコ。二人のやりとりがなんとも言えず甘くもあり切なくもあり苦味も少し加わって不思議な風味の飲み物となり私の心をファンタジーな空間へと運んでいく。ティコの正体なんてどうでもいいよねジャス。最後はそんな気持ちにさせる愛おしい物語。

2022/04/29

さっとる◎

冬の始まりはたくさんの無彩色にいろどられて、凍てついた夜空の細い月が船みたいに見えたから。私あそこから来たんだよって言ってみる。それは大変だったね、帰りたくならないかい?ってあなたが言う。ここに来るまでいっぱい時間がかかったよ。でも帰るチケットがないし、帰らないつもりで出てきたから。そうやって思っていたけど一人の冬がこんなに冷たいなんて知らなかった。帰る場所がないってこんなに途方もない感じだなんて。帰る方法はあるの。でもあなたの隣が温かいので。帰ってくるかいって、言ってくれたから。もう少し居てもいいかな。

2018/12/20

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