深淵 〈上〉
深淵 〈上〉 / 感想・レビュー
空箱零士
(続刊) 85年~97年の記憶を失った麻田布満が友人・橋本の冤罪事件に関わる話。冤罪事件も記憶喪失の謎もミステリ的に読めるが、氏独特の引用の多用・晦渋な文体には手を焼くだろう(それが氏の魅力でもあるが)。やはり麻田の失われた記憶の有り方が目を引く。積極的な記憶の回復を望まない決意をする一方で、決意の一端に記憶喪失中に発表された文学の知識があり、彼の記憶が冤罪事件に思わぬ展望をもたらす。十二年間という記憶の「深淵」がいったい物語に何をもたらすか。恐らく下巻で麻田は彼自身の「深淵」と向き合うことになるだろう。
2012/11/20
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上巻ではいろいろな設定がちりばめられるだけで、水とお油のように混ざり合ってるようで、それぞれが別個に主張している。これからどう、物語が収束していくのだろう。
2015/12/15
いちごみるく
"〈人生〉とは〈記憶〉である。人は、たとえ時間的に百年ほど生きても、そのうち六十年の記憶しか当人になければ、その〈人生〉は、六十年であり、そのうち二十年の記憶しか当人になければ、その〈人生〉は、二十年である。"
2024/05/28
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