なぜ絵版師に頼まなかったのか
なぜ絵版師に頼まなかったのか / 感想・レビュー
hirune
明治時代を舞台にしたミステリ短編連作集。一話毎に名前も職業も変わっていく怪しい男と、髷姿の少年給仕から東大予備校生、東大医学部学生、東大教授の助手と出世していく冬馬とのコンビが事件に巻き込まれ、政府の雇われガイジンの教授たちを交えて解決していきます。各話の題名も有名なミステリを捩ったもので洒落てますね☆人物のキャラが面白く、明治時代の実在の人物がたくさん出てくるし、時代が変わって混乱し迷走する明治の日本の姿が興味深いです。ホント続編があったらよかったのになぁ(。-_-。)残念ですね。
2015/12/09
onasu
明治前半の帝都を舞台にした北森さん、久しぶりに浸ってきました。 明治政府のお雇い外国人、日本大好きのドイツ人医師ベルツ。但し、主人公は、その家の住み込みの給仕となる葛城冬馬少年。 ベルツ医師、医学の探究にも熱心だが、諸々の事件にも首をつっこみたくて、冬馬を調査に赴かせる。その途上、横浜で出会ったのが市川記者(その時は!)。以後は、他の異国助人も加わり、時に政府要人も絡んだ謎解き。 典型的な日本好き外国人のようなベルツだが、冬馬が身の立つよう、計らってもくれ、冬馬にとっても、異国助人だ。
2013/06/25
よむよむ
元号が明治になった年に生まれたという13歳の冬馬が、当時の東京大學に招聘されていた変わり者のドイツ人ベルツ氏の給仕となり、怪しげな新聞記者やベルツ氏の友人たちと様々な事件の謎を、おちゃらけながら解いていく。当時の背景や文化が興味深い。庶民の食生活も垣間見えて「へぇ~」の連続。事件は時代の事情からのもので、謎解きはおまけっぽい。副題に《異国助人(おたすけガイジン)奔る!》とあるけど、ベルツ先生はいっつもお酒ばっかり飲んでいて、走り回るのは冬馬と怪しい某氏だったな。でも楽しく読めました。
2010/06/19
藤枝梅安
明治初年の東京。帝國大学に招聘された外国人教師が謎を解く。語り手は松山出身の葛城冬馬。狂言回しは新聞記者・市川歌之丞。ベルツ、ナウマンなど明治初期の日本に影響を与えた外国人達はそんな日本の「焦り」を心配している。日本をこよなく愛する外国人達の奇妙な言動や服装を描きつつ、日本社会の歪みもさりげなく描く。各短編のタイトルも凝っており、「執事達の沈黙」は「羊たちの沈黙」を想起させる。続きが読めないのが返す返すも残念。
2010/04/20
kishikan
北森作品の中で読み残していた作品。明治初期を舞台にした、少しユーモアを交えたミステリー。明治政府から帝国大学の医学の雇われ教師として招聘されていた、エルウィン・フォン・ベルツ先生(実在)とその弟子冬馬が次々に難しい事件を解決する物語。モースやフェノロサなど、明治期に日本を訪れていた様々な学者も登場し歴史好きのミステリー愛好者には受けるだろう。「裏京都ミステリーシリーズ」のようにシリーズ化したかったのかもしれないが、残念ながら北森先生が亡くなられてしまった。ただ、他の作品と比較して歴史的な掘り下げは薄い。
2010/08/13
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