恋の蛍 山崎富栄と太宰治
恋の蛍 山崎富栄と太宰治 / 感想・レビュー
chimako
山梨は太宰ゆかりの地。文学館は太宰の特別展を度々開催。そして、天下茶屋。太宰が三か月の間逗留した宿である。そこからすぐの山間「富士には月見草が良く似合ふ」と彫られた石碑。裏書きは井伏鱒二。井伏は太宰の恩人だと長い間思っていた。確かに恩人ではある。太宰の入水自殺の相手は水商売の女の人だと思っていた。間違いだった。井伏は太宰に「悪人」だと言い残される。そして富栄を悪者にする。太宰の弱さに辟易としながらも、その魅力に抗うことが出来ない多くの読者。戦争でねじれた富栄の人生と恋心の一途。死後の誹謗中傷に心痛む。
2022/09/25
紅香@本購入まであと9冊
映画を観た。中でも富栄に深い興味を覚えた。何を思って死の淵まで一緒に行こう決意したのか。その背景とは。。戦争に負けた途端、掌を返した日本。この国に裏切られ、憂いていた聡明な富栄が浮かぶ。二人が初めて出会った会話を読んで、決して甘い言葉で恋に落ちたのではなく、太宰の中に押し殺していた自分を発見したからだったのだと腑に落ちた。相手の中に分身を見つけたら、ほおっては置けない。。割り切れないことばかりの浮世。蛍のようにただ生きたかった富栄。これからは太宰の小説の行間に様々な女達の献身を目で追ってしまいそうだ。
2019/09/28
ちょん
太宰治との入水自殺を行った山崎富栄の短い人生。富栄父の人間としての器の大きさに圧倒された。膨大な資料をもとに書かれた富栄と太宰の生涯。事実を事実として扱わない太宰の仲間に失望。この話をきっかけに他の太宰に関する本も読んでみたい。
2015/08/29
ヒラP@ehon.gohon
映画を観なければ、手にしなかった本かもしれません。 太宰治と心中した女性がどんな人間だったか、興味を持って読み始めたら、フィクションとは思えない現実感の中で、太宰の生涯と山崎富栄の生涯とを絡み合わせた人間ドラマになっていて、引き込まれました。 幾人もの女性の献身を受けながら、太宰治という魔性作家は、自分を削りながら創作を続けたのでしょうか。
2019/11/19
キムチ
太宰・・女性関係のただれた大金持ちの息子 学生時代より突出した文学的才能の迸るままに生き急いだ自殺好き、女性本能をくすぐる風貌と雰囲気。 この本は 入水迄の太宰と富栄の歩き方を嫌悪募る程 丁寧になぞっている。 巻末で「大正から昭和を生きた若い女性の足跡を辿りつつ、太平洋戦争が落とした影を」とあり、読み手各々のスタンスで考える体裁。 何度も表紙の写真、太宰の風貌を眺め、美知子、静子の戦後を読み、富栄の死後も守り続けた山崎家の苦悩を思い、ある意味「勝手に死を美学として刹那に黄泉に飛翔した」出来ごとを咀嚼した
2013/10/08
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