リアル・シンデレラ
リアル・シンデレラ / 感想・レビュー
takaC
確か数年前の直木賞候補だったよななんて軽い気持ちで読み始めたけどなかなか読み応えがある話だった。当たり前か。でも難しくて難解なところも多かった。後から確認したらレースの対抗馬は名だたる作品がずらずら並んでた。
2016/11/13
めろんラブ
「もしや天才ですか?」初・姫野の衝撃波を食らっての第一声。本作は哲学や女性学、キリスト教など多くの知見をベースに、攻撃力の高い知性でまとめ上げられている。言うなれば「ファンタジーの薄衣をまとったヒメノ的幸福論」。タイトルの「シンデレラ」は、あの有名な童話を踏襲する為というより、幸福の象徴として冠したような。何故なら、ある女性を映し鏡に多くの人の幸福が色とりどりに溢れているから。ラスト頁の余白にはきっと、読み手各々の幸せが涙と共に映る。タイトル・装画・作者名(?)に怯まず、ぜひ。
2012/09/19
utinopoti27
虐げられし者のしたたかな戦略・・今までシンデレラとはそういう寓話かと思っていた。確かに成功物語には違いないが、それが幸せかどうかは別問題だろう。現代のリアルシンデレラ・倉島泉。諏訪温泉郷の小さな旅館に生まれ、華やかな妹の陰で育った彼女。本作は、関係者の話を継ぎ合わせる形式で、嫉妬や欲望とは無縁の献身的な泉の生きざまを浮き彫りにしてゆく。白馬の王子も現れず、カボチャの馬車もガラスの靴もない。それでもピュアでストイックな歓びはあるのだと。真の幸せとは何か、作者の提示するシンデレラストーリーは、限りなく崇高だ。
2019/06/15
ミナコ@灯れ松明の火
美しさと富を手に入れたシンデレラは本当に幸せなのか。現代の価値観に疑問を投げかける力作。泉が願った「3つの願い」はどれも、物質的な豊かさ=幸せだと信じ行動することに疲れた、けれどその価値観から抜け出せない現代人にとって桃源郷のように思える。泉のことを「幸せだった」「不幸だった」とは最後まで表現せず、読み手に判断を任せるようなラストも、私はよかったと思う。直木賞の選評にて宮部みゆきさんが言っていたとおり「書いてくれてありがとう」と、本を閉じた後、私も思った。
2012/02/14
風眠
童話「シンデレラ」について調べていたライター、「シンデレラは幸せになったのか」と疑問を持つことから始まる物語。倉島泉(せん、と読む)という女性の半生を追うことで「シンデレラ」という言葉に対してのイメージが変わっていく感じが凄い。泉は、どんなに自分が虐げられていても、常に人の幸せを願っている女性だ。はじめは、鈍感すぎて逆に裏がありそうで不気味・・・と感じたが、3つ目の願いが何か明らかになったとき、ぶわっと涙があふれた。「自分ばっかり・・」ってなってる時に読むと、いろーんな事から解放されるような気がする。
2013/01/12
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