舟を編む
舟を編む / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『大渡海』そのものといった、本書の装丁の人気と評価が高い。それはもちろん認めつつも、最大の功績はタイトルにある。これが『辞書を編む』であったなら、こんなには注目されなかっただろう。「舟」という隠喩が実に効果的だ。また、この作品が読者を惹き付ける要因は2つあると思う。1つは、馬締や松本先生の、辞書にかける「ひたむきさ」と「一所懸命さ」が読者の心を打つこと。そして、もう1つは言葉という形のないものを『大渡海』という形あるものに造り上げて行くことへの共感であろう。最期の先生の遺書はしみじみと喜びが伝わってくる。
2012/06/21
遥かなる想い
2012年本屋大賞大賞受賞作品。辞書を「言葉の海」を渡る舟になぞらえ、国語辞典の編纂に 関わる人々を描いた作品。読んでいてなぜか懐かしい感覚にとらわれたのは誰もが経験した 学生時代の「辞書を引く」という行為を「辞書を編む」という視点で描いてくれているからなのだろう。辞書のてざわりを「ぬめり感」と 表現しているが、確かに紙ざわりに拘った時代があった…馬締(まじめ) 君を読者みんなが応援した結果が 本屋大賞なのだろう…よい本だった。
2013/07/28
kishikan
ふむふむ、「舟を編む」っていうのはそういう意味だったのですね。良い言葉だなぁ。構想段階から幾度かの難関と10数年の時を超え、やっと新しい辞書は陽の目を見る。そこには、言葉だけではなく編集者と監修者の見えない苦労がいっぱい詰まっている。しをんさんは、辞書編纂という偉大ではあるけど本当に地味な仕事に、友情、恋、信頼、別れなどの情感という糸を織り込みながら、僕たちに言葉の持つ意味の重要性を教えてくれる。ちなみに、僕が使っている国語辞書は、高校生の頃から変わらず愛用している岩波の国語辞典(第六版)で、もう2代目。
2011/11/26
佐々陽太朗(K.Tsubota)
馬締さんの香具矢さんに宛てた恋文にニンマリした。森見登美彦氏の小説『恋文の技術』に延々訥々と綴られた手紙もそうであったが、恋文の要諦は思いの丈を率直に書くことなのだ。かっこ悪かろうと滑稽だろうと私は今あなたに恋するがあまりハチャメチャなのだ、そしてその状態を救うのはあなたしかいないのだということを伝えることが肝心なのだ。(と、私は思う) 素敵な物語を読ませていただきました。言葉と活字を愛する者として、素直にしをんさんの想いを受け止めました。言葉は思考であり、感情であり、記憶であり、道を照らす光なのですね。
2012/11/18
射手座の天使あきちゃん
「辞書づくりに携わる人たちのことを、わりと面白く書いたつもりです!」本屋大賞授賞式で鼻高々に、しをんさんが語っていたのはダテじゃ無かった ♪面白かった、面白かった、面白かった Yes!♪(笑) 言葉の荒海を進む舟のように「大渡海」と言う辞書を編む、素敵でした! しをんさんお得意の変人キャラも健在、今年の本屋大賞はアタリです! (^_^)v
2012/04/28
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