海賊女王(下)
海賊女王(下) / 感想・レビュー
文庫フリーク@灯れ松明の火
海賊女王グローニャがエリザベス女王に謁見したという史実。皆川さんはインタビューで「同い年のこの二人を対比させると面白いと思った」と語られている。出撃するグローニャに城の守備を命じられたアランの「お前が行くところが、俺のいるところだ」拒否の言葉が心地よい。すでに60歳を越え、尚もイングランドに屈せず闘いに臨むゲールの女王と男達。主人公はアランとグローニャのはずなのに、次々と明かされる上巻の伏線は脇役だった3人の男を際立たせる。ペストの蔓延するロンドン。孤独なエリザベス女王の宮廷で繰り広げられる謀略、→
2014/02/16
優希
時間の過ぎるのは早いものです。老い、死、生というドラマが奏でられていく中で、遂にグラーニャとエリザベス1世の対面が叶います。同じ年の女性同士、出会うことはかなり大きな意味を持っているように思いました。ただ、抗争が終わることはなく、アイルランドはイングランドの支配下であることが変わらないというのは非情な事実として受け止めるしかありません。それでもグラーニャと仲間たちの反逆精神を貫く姿勢は誇りの象徴のように感じます。
2017/09/19
財布にジャック
日本人が書いたとは思えない翻訳物のようにさえ感じられるスケールの大きな歴史大河でした。坦々と物語は進むのに、物凄い読み応えを感じるのが不思議なほどでした。おそらく作為的にドラマを創らなくても、存在自体が圧倒的な人物が主役だったからなのでしょう。一生涯戦い続けた彼女ですが、配下の男達にこれほどまでに慕われて羨ましいほどでした。アラン目線で描かれているので、彼女の気持ちは解り難いのですが、それだからこそクールな女と感じられてよりいっそう素敵に見えたのかもしれません。
2013/11/03
seacalf
上下1000ページ以上の大作。やっと読了! 好き嫌いは別として、グローニャをはじめとして味のある登場人物達がふんだんに出てきて、彼らの活躍を追うだけでも読みごたえあり。これだけ壮大なストーリーを濃い密度で紡いでいくんだから、すごい力量だ。個人的好みからすると、あっさり淡々とした文章な気がしたけれど、それはたぶん相性の問題。肉汁まみれの口づけシーンには笑ってしまった。そういった荒々しさだけでなく、もっと繊細なケルト文化も紹介して欲しかったと思うのはアイルランドファンの我儘かな。
2016/05/05
naoっぴ
なんという濃い人生!氏族オマリーの土地と海、そして愛する息子を守るため、最後まで戦い抜くグローニャ。小さな氏族ながらゲールを愛し命がけで戦うグローニャたちの一方、その敵イングランドでは自らの保身と野心に躍起になる人間たちの争いで政治は堕落。グローニャたちアイルランドの氏族同士がともに手を取り合い、一枚岩になれていたら、あるいは歴史は変わっていたのかもしれない。とはいえそれがなかなかできないのが人間というものか。欲と欲のぶつかり合いが争いを生みだす。骨太な読み応えにお腹いっぱいの大満足。
2019/01/14
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