死の淵の愛と光 (叢書・死の文化 14)
死の淵の愛と光 (叢書・死の文化 14) / 感想・レビュー
サトウ
神への信仰というと、妙に深刻ぶってシワを寄せた、この世の苦難を全て背負った顔を思い浮かべるけど、信仰はその苦難と同じくらい喜びの面もあるように思う。それは小さな子どもがお母さんやお父さんを驚かそうと、後ろからこっそりこっそり近づいていくような、気を緩めると思わず吹き出してしまいそうな感じだ。『ある死刑囚との対話』において加賀乙彦に対して見せた顔、対して本作で美絵さんに見せた顔。その二つはあまりに違う表情だが、一人の人間が異なった表情を事実として持っており、その複雑さの中にこそ人間は生きているのだろう。
2024/07/07
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