世界幻想文学大系 第31巻 A 東方の旅 上
世界幻想文学大系 第31巻 A 東方の旅 上 / 感想・レビュー
スターライト
全四部に分かれるネルヴァルの大作『東方の旅』、上巻では「ある友への序章ー東方へ」「カイロの女」を収録。ある年の11月にパリを旅立つところから始まる本書は、スイス、イタリア、ベルリン、ウィーン、ギリシアを経てエジプト、レバノンへ至る道程が語られる。そこでは様々な出来事に遭いながらも、異郷への憧れがあふれさながら旅行記を思わせる。とりわけエジプトでは、ヨーロッパ人が持つ中近東のイメージと現地での差異が際立ち、宗教の違いもあって現地人になりきれない皮肉な展開が待つ。月報に巽孝之のディレイニー論にはびっくり。
2021/04/05
rinakko
素晴らしい読み応え。神秘主義と幻想の詩人が、文明の母オリエントをめざす。日記とも書簡とも呼びあぐねる、稀代の紀行文学。雅俗混淆の作風も楽しかった。「ある友への序章」では、ちょっと顰蹙な行きずりの恋の話があったり、まさかこの先もこの調子だろうかと危ぶんだが…。始めの地カイロで家を借りた詩人は、思わぬ事態から、勝手もわからぬ当地で花嫁探しをする羽目に陥ってしまう。ここでは“花嫁探し”の主題は、止むに止まれぬ事情に流されて始まった印象しか受けない。でもそれが意外と後を曳く展開となり、面白い読みどころになっていく
2013/04/10
刳森伸一
小ロマン主義作家と称されるネルヴァルの旅行記。世界幻想文学大系の一冊でタイトルも「オリエンタリズム」を強く感じるものだが、少なくとも上巻においては幻想風味は薄く、ネルヴァルが異文化に触れて右往左往する様子を楽しむドタバタ旅行記といった感じ。ラブレーの『パンタグリュエル物語 第三の書』を彷彿させる。色事に興味が大ありなのに、ことごとく「失敗」するネルヴァルが可笑しい。
2019/12/16
アルクシ・ガイ
19世紀半ばの、オリエント旅行記。160年という歳月の開きが、心地よい。
2012/10/02
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