世界幻想文学大系 第37巻 第三の魔弾
世界幻想文学大系 第37巻 第三の魔弾 / 感想・レビュー
きゅー
冒険活劇として非常に愉快なだけではなく、歴史的人物と出来事を使いつつも架空の主役グルムバッハがダイナミックに描かれた幻想小説としても素晴らしい出来映え。さらに、読み終えたのちに序曲を読み返してみるとなんとも苦々しい感覚に襲われ、たんに面白いという範疇をゆうに飛び越し、あの名作ドン・キホーテを思い起こさせる読後感。史実に架空の物語が上手に挿入され、盛り上げ方の手際の良さったら。伏線の散りばめ方も読者のツボを得ている。『夜毎に石の橋の下で』ほどの緻密さはないかもしれないが、この躍動感はすごかった。
2013/04/11
スターライト
再読。記憶喪失となったライン伯グルムバッハが宗教戦争のカルロス五世側の陣営で聞いた老兵の話を展開した物語。宗教戦争から遡ること約四半世紀、コルテスによるメキシコ征服でコルテスが新大陸に上陸する前にドイツからやってきていたグルムバッハが、コルテスに仕えるカルボナーロをだまして手に入れた一丁の小銃と三発の弾丸。それには呪いがかけられ異教の王、女、そして自分自身に命中するという。歴史に材を採りながら、呪われた銃、悪魔との契約などの幻想的な要素を取り入れたペルッツの長編第一作。やはりペルッツはいい。
2021/07/06
rinakko
いやはや面白かった! アステカ王国を征服しようとするスペイン軍に立ち向かい、黄金を持ち帰らせまいと戦ったラインの暴れ伯グルムバッハの数奇な物語。呪いをかけられた三発の銃弾。その呪いをかけた男の予言は、ただグルムバッハを追い詰め苦しめる為のものだった…。果たして銃弾は予言通りに命中するしかないのだろうか、何故、どのようにして…?と、ひやひやはらはら頁を繰る手が止まらなかった。当時の宗教革命の嵐など、史実との巧みな絡ませ具合も堪らない。
2013/05/07
かわうそ
20世紀初めの東欧の作品なのに、ラテンアメリカ文学のマジックリアリズム風。展開はスピーディで読みやすく、非常にヘンテコで面白かったです。
2012/08/30
スターライト
レオ・ペルッツが周辺で盛り上がっているので、面白そうだと思い着手。スペインのコルテスによるメキシコ征服を背景に、そこにドイツ人ライン伯ことグルムバッハが呪いをかけられた小銃でコルテスの野望を打ち砕こうとする。後年の老兵士が語るという枠物語なのだが、呪いをかけられた三つの銃弾が誰を狙うのか、モンテスマ王を戴くインディオとスペイン軍、そしてグルムバッハとメンドーサ。敵、味方のどのキャラクターも生き生きしていて、魅力的。読後の余韻も印象的で、根強いファンがいるのも納得の佳品。その他の作品も読んでいく予定。
2015/11/12
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