世界幻想文学大系 第42巻 A ヘリオーポリス 上
世界幻想文学大系 第42巻 A ヘリオーポリス 上 / 感想・レビュー
スターライト
ヘスペリデスから「青い通報艦」でヘリオーポリスに帰還したルーチウスたち。そこは絶対的な官僚制の支配を企む、太守と中央局を中心に集まる一派と、プロコンスルと宮殿に代表される昔の貴族政治と元老院の名残に基づくルーチウスが属する一派が支配権を争っていた。古代と近代、現代的要素がまじりあい、幻想・歴史・未来・哲学などの側面ものぞかせながら架空の都市ヘリオーポリスでの物語は展開されていく。以下、下巻へ。
2021/09/14
毒モナカジャンボ
LSD的幻視から幕を開ける奇怪な思弁小説。自然科学と色彩の描写がふんだんに凝らされた魔術的SFの世界には共産主義的グループと反動的貴族主義者たちのグループがおり敵対している。食卓で、住まいで、軍学校で交わされ続けるギリシア古典のような対話。興味深いのはどちらの陣営も官僚的・軍的機構によって統御されており、両者はただ思想の面で分断されている。『労働者』に結実しているユンガーの新ナショナリズム(労働者国家主義)的思想がそこかしこから染み出してくる。オカルトと見まごうような異様な領域に接近する異様な人々。
2019/06/19
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