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ナペルス枢機卿 (バベルの図書館 12)

ナペルス枢機卿 (バベルの図書館 12)

ナペルス枢機卿 (バベルの図書館 12)

作家
グスタフ・マイリンク
ホルヘ・ルイス・ボルヘス
種村季弘
出版社
国書刊行会
発売日
1989-04-21
ISBN
9784336025678
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ナペルス枢機卿 (バベルの図書館 12) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

マイリンクの初期の3つの短篇を収録。いずれも奇妙な読後感を残す物語だ。まず、普通の意味でいうプロットがほとんどない。また、登場するのはいずれも数人の男たちだけであり、しかもそのことごとくは老人、もしくは老人的な人物だ。したがって、物語には情熱や愛が描かれることは絶えてない。そこにあるのは、月であり金属的な光であり死の影である。マイリンクが社会的な関心を持っていたとは思われないが、「月の四兄弟」には彼の死後にやってくる壊滅的な世界大戦が予兆されていたことには驚かされる。きわめて直感的な作家だったのだろう。

2013/02/24

コットン

バベルの図書館の一冊で3つの短編集。長年にわたって様々な信仰団体や神秘主義者のグループと接触していた著者だそうでオカルトっぽい作風で読ませる人。

2015/11/22

内島菫

「J・H・オーベライト、時間‐蛭を訪ねる」と「ナペルス枢機卿」には、別世界の不可視の国に対抗するために、希望を根こそぎに絶やすことにこだわる人が出てくる。なぜなら別世界の住人たちは、あたかも吸血鬼のように私たちの世界の希望を吸い取り、ぶよぶよの水ぶくれの如く膨らんで頽廃的に存在し、それと反比例して私たちは枯れてゆくから。しかし、希望を持たないということも一つの希望ではないだろうか。その二編の後に続く「月の四兄弟」は、この希望に導かれているように私には見える。

2018/06/29

藤月はな(灯れ松明の火)

祖父の墓碑銘である「余は生きている」という矛盾した論理を解き明かそうとする子孫の話である「J・H・オーベライト、時間-蛭を訪れる」。「内部には『期待』が生き残っているのです」、「死んだふりをした人間のように成りなされ!」、「期待という果実に触れてはならん」という言葉は期待や幸せを知っているからこそ、実感してしまう生きていることの辛さや恐怖を炙り出しています。しかし、人間は死んだ風に生きていては何も為しえない。苦しんでも何かを為すか、死んだように生きることで安寧とおこぼれを戴くか。

2012/12/01

ふるい

生死を超越し、ただ在ることを渇望する狂った男たち。これらの登場人物には、狂気と片付けてしまうのが憚られるような、著者マイリンクの生涯にわたる自己希求の精神が分け与えられているようだった。そして、3篇どれも女性(母性)への嫌悪感が漂っている…訳者種村季弘の解説によると、貴族と舞台女優の間に私生児として誕生した自身の出生の不安定さに端を発していたようだが、はたして。「J・H・オーベライト、時間-蛭を訪ねる」が特に良かった。

2021/01/15

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