日本幻想文学集成 1 泉鏡花
日本幻想文学集成 1 泉鏡花 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
ずっと気になっていた国書刊行会の『日本幻想文学集成』。須永朝彦氏が編集に携わっていた事を知り、『書物の王国』と共に読もうと決意し、着手しました。『化鳥』は波津さんのコミカライズで既読。人間第一主義に対して疑問を抱く坊やと、人間社会でしか通用しない権威を振りかざす輩に対して毅然な態度で接する母様の凛々しい事。「処方秘薬」は情念の呪いが味わえる怪談である。一筋も崩れなかったお辻の高島田を掴み、引きづる手の白さと遂に崩れて地に乱れる黒髪の対比はサディズム・マゾヒズム美を感ず。また、雪女のような凄烈さと慈悲も同じ
2021/11/11
井月 奎(いづき けい)
幻想を広辞苑で引くと、「現実にないことをあるように感ずる想念。とりとめもない想像」とあります。とすれば泉鏡花の書く物語は幻想ではありません。それは少しずれたところに実在します。時間が、空間が、心がほんの少しずれたところ。短編掌編十一作を集めたこの本は普段は見えないこと、ものを見せてくれます。そして恋がなぜ命を求めるのかを教えてくれます。こちらとあちらを隔てるもの、こちらとあちらへ行き来するための翼のはしっこを見せてくれるのです。私は鏡花の筆に恐ろしさすら感じるのです。
2018/02/12
井月 奎(いづき けい)
「光籃」を再読。雪女でも現れそうな冷たい風ふく大つごもりに盂蘭盆の時分、川面にうつる月光を笊ですくう妖しい女神の話を読むのもまた乙なものでしょう。流れる水に揺れる月の姿を魚篭にため、からかいのきつい旅芸人たちの部屋にその青い、白い光を削りつつ、砕きつつ、そして最後には壁に十七夜の月をあらわして姿を消します。月光の散り行く様と集まり青く輝きだす様子が文字にて輝きます。鏡花の筆の神がかり、ここに一つの形を成します。
2021/12/31
魚京童!
化鳥だけ。化けて出てこられても困るけど。化鳥。
2018/11/18
白義
妖しく美しく光る文章のフォルムが醸し出す幽玄の世界に取り込まれてしまう魅惑的な伝奇短編集。童心の母への恋慕と奔放な幻想への飛躍が重なりながらもずれ、多様な解釈を許す化鳥、おどろおどろしいけど飄々としてユーモラスな天狗たちが登場する妖魔の辻占など傑作揃い。きちんと日本伝奇、幻想文学の近代の創始にして江戸からの流れも継いでいるのに、その作風はむしろ無国籍というか、異国的な感性すら感じさせる。印度更紗と貴婦人はひょっとしたらひと繋がりの前後編か、と想像してしまう。全体にマイナーな短編を中心にしたそうだ
2012/10/24
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