川端康成 白い満月 (日本幻想文学集成)
川端康成 白い満月 (日本幻想文学集成) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
「十六歳の日記」は再読。介護をしている時に感じる疎ましさ、後ろめたさ、時折交わす会話の上の空などの描写は体験者にとっては自身の事が同時に甦ってくる程に生々しい。そして後の記憶の方が朧気で美化が掛かっているという後記が妙に心に残った。喪失が日常に追いやられるのではなく、寧ろ、過去の思い出への無意識的な選択(美化)が喪失を静かに決定づけるかのようだと思ったから。「白い満月」は歪な姉妹とその恋人たちの関係と呼応し、さかしまな恋情が浮かび上がってくる。「お前に責任はないのか」。この痛烈な言葉は跳ね返るのだろうか。
2022/05/13
柊渚
「この秋に死にますね。木の葉が落ちる時分ですね。」 肺を病む「私」と自分の死を予知するお夏。たがいに死を予感した男女の儚さ。不透明なヴェールに包まれたような、静謐な美と幻想の世界に恍惚とする。ラストのあの美しさは筆舌しがたく、やっぱり川端は至高です…。「私よく先生の夢を見ます。──痩せましたね。──胸の上の骨が噛めますね。」川端氏のこういうところです。天才です。大好きでしかない…。
2021/10/12
ちろる
川端康成初読み。 どこまでも死がつきまとう。 なんだろうこれは。 美しさだけじゃない暗さと冷たさが描かれている。死。なのに男はそこに惹かれていく。孤児という彼の境遇と関わるものがあるのだろうか。 生命に溢れる女性も出てくる。けれどそこに男は深く関わってないように思う。 なんなんだろうか。対比?とも少し違うように思う。本当に死が漂う。そんな感じで。 初期のものも多いようだしなんか他の作品も読まないとわからない感じもする。いつか必要があれば再読ですね。
2015/02/14
晴
橋本治が編んだ川端康成の幻想小説集。肌が合わないような、居心地の悪さを読みながらずっと感じていた。編者が思う「幻想」と私の想う「幻想」にズレがあるのだろうと、少し残念な気持ちで読みはじめた巻末の「解説」が一番読みごたえがあった。面白かった。この「解説」を読み、改めて川端康成を読みたくなり、新たに橋本治も読んでみたくなった。
2018/01/18
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