鏡花コレクション 2
鏡花コレクション 2 / 感想・レビュー
井月 奎(いづき けい)
旧知の医学士、酒田の家、その診療室に宿をとった小松原立二は、己の源泉である水にまどろみ浸かる幼い自分に会い、黄泉に誘う水を恐れてあたふたと寝床から逃げる。今や白骨で診療室に標本とあいなる沼夫人はすっぽんを使いにして小松原を水田の源流である沼へと誘う。その水田、沼は小松原が軍人婦人の人妻と出水を遊んだ昔の場所。そこで二人は意図せぬ心中に相成りつつも成就もできぬ。白骨の沼夫人は肉をなくしても膝を抱えた姿が妙にしてふっくりと美しいさま。おめおめと生き延びる小松原は歯も髪もぬけて老いさらぼえていくのでしょう。
2017/06/18
井月 奎(いづき けい)
「月夜遊女」鮟鱇の腹にいた美女の見え隠れする脛は、凄きばかりの白い脛。月の光に照らされた鮟鱇はいつその腹に美女をすまわせたのでしょう。月の光に見紛う脛を隠して見せる緋の襦袢は美女の火遊びがすぎることへの警句警告。足を病んだ殿様の釣りも狩りも児戯と変わらぬそれはお遊び。鮟鱇の腹からあらわれた美女は増えつつ減りつつぞろぞろ、ぞろぞろ。紅蓮に包まれ美女を弓射り、めでたしめでたし。神将にもらうお小言も今は愛敬に聞こえます。これは一幕の舞台、月の光に歪められた雲が幕間、心の舞台。
2016/08/20
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