ライロニア国物語―大人も子どもも楽しめる13のおとぎ話
ライロニア国物語―大人も子どもも楽しめる13のおとぎ話 / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
ライロニアも現実には存在しない理想国家かもしれない。そんな国から届いたのは住人に関する13の物語だ。13と言えば魔女の1ダースと言われている数であり、物語も人もちょっぴり奇妙だ。ライロニア王国にはどこかで見たことのあるような人が住んでいる。ちなみにこれを書いたのは、1960年代、まだソ連が東欧諸国を支配していた頃のポーランド出身の哲学者である。じっくり読めば住人に訪れた危機を、彼等がどうやって乗り越えていくかを通じて「人生とは何ぞや?」など、哲学の真髄を語りかけている…のが聞こえる、かもしれない。
2017/02/10
rinakko
人の迷妄っぷりが可愛くてほろりとする、不気味哲学的寓話集。皮肉と奇天烈の匙加減は些か多めかと。「こぶ」は『東欧怪談集』で既読。確かに怖い、怖すぎる…しかし怪談か?と首を傾げるも、シュールな味わいにインパクトありまくり。背中に自分とそっくりなこぶが生えたアイヨの、切ないお話。ほか、顔の美しさで有名だったパン焼き職人が、美を保管するために高価な箱を買って顔をしまいこむ「美しい顔」(究極アンチエイジング!)、人の寿命があまりにも短いと思い当たった王の試みが国を滅ぼす「長寿問題はどのように解決されたか」…などなど
2015/03/11
三柴ゆよし
架空の国ライロニアを舞台としたシュールで笑えて、しかも不気味な創作童話集。どんな話かというと、恋人の目の色がどうしても思い出せない兵隊が恥ずかしさのあまり小さくなったり、背中に自分と瓜二つのこぶが出来たり、平凡な男が有名人になるために甲斐ない努力を続けたり、あまりに美しい自分の顔が損なわれるのを恐れた男がそれを箱に入れて保管したり、する話です。屁理屈を捏ね通したような文章と、頭を抱えたくなるような奇天烈理論が、抱腹絶倒を誘うこと間違いなし。内田百閒『王様の背中』を髣髴させる傑作でしょう。
2011/10/13
北風
非常識が非常識を呼び、非常識がひっくり返っても、非常識のままなにも改善されずに、ただただライロニアの人々は坂を転げ落ちていく。洒落たお伽噺ってことだけど、洒落ているかはわからない。ただきっと、本当におへそが茶を沸かす国に違いない!
2016/01/27
きゅー
そもそもライロニア国は決してどこにもない国。そんな国で起こった出来事はどれも破天荒。人間に生えたコブが人間をのっとった話、顔のない男の話、死後の世界の話など。それにしても、「大人も楽しめる」と謳っているのは伊達ではない。どの物語もいやーな後味を残すものばかり。むしろ子供にとっては毒なのではないかと心配してしまう。ある短編では、神が作った法律によって自分ががんじがらめになる様子が描かれている。神を権力者なり、独裁者なりと考えればイロニーてんこ盛り。何から何までまっとうな話が一切出てこない作品集だった。
2012/12/19
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