郵便局と蛇 (魔法の本棚)
郵便局と蛇 (魔法の本棚) / 感想・レビュー
おおた
「ライフタイムベストとかいくつあんねん?」と時々問いただしたくなるんだけど、わたしの場合はこれ。出会って15年くらいたつけど、未だに変わらない不動の1位、というかコッパードは特別な作家。英語で読もうとすると古い言葉が多くて難しいんだけど、本書(文庫版も!)や光文社文庫によって再び光が当てられるのはうれしい。改めて読むとキリスト教に基づいた物語が多いことに気づく。本人や父は無神論者だったようだけど、イギリスとはいえ1900年代前半に無神論者でいることは難しかったろう、だから書けた作品群なのかも。
2016/11/06
乙郎さん
イギリスの作家の短編集。バラエティに富んでいる。「銀色のサーカス」や「若く美しい柳」、「王女と太鼓」といった寓話調のわかりやすい作品もあれば、「辛子の野原」など複雑な感情を題材にしたものもある。「うすのろサイモン」や「シオンへの行進」ではキリスト教への複雑な思いが見え、特に後者は少々難解と感じた。表題作も短さゆえ解釈が分かれる。そして、無気力青年を主人公に据えた「幼子は迷いけり」の寓話的な展開に含まれた救いのなさ。けど全体的には読みやすく美しい小説群なのでおすすめです。
2009/10/01
きゅー
幻想的な物語が続くのかと思いきや、そんなこともなくバラエティー豊かな短篇集。『ねじの回転』を思わせる「ポリー・モーガン』では、淡々とした描写の中に籠っている想念が印象深い。「幼子は迷いけり」では、一体どういうふうにストーリーが進むのかと思ったら、どういうふうにも展開しない潔さが、逆に新鮮で刺激的だった。「シオンへの行進」の鉄拳修道士には笑わされた。一篇ごとにガラっと雰囲気が異なるので、予想がつかず面白い。ただ、先に挙げた『ねじの回転』のように、さらに面白い他の作家の作品を思い出してしまうのが難点だ。
2012/03/01
ネムル
物語にも筆致にも現代のような過剰さがないのだが、一気に物語に引き込まれる。表題作など特に急転直下のオチがつくが、それがすっとぼけた味わいを残しており素晴らしい。あとは「銀色のサーカス」「若く美しい柳」「王女と太鼓」なんかも良い。
2010/01/28
nightowl
ロマンチックな表紙と異なり、どこか抜けている可笑しさの漂う短編が特徴。女二人のただの井戸端会議なのに妙な魅力のある「辛子の野原」、家出少年の冒険「王女と太鼓」などなど。それら以外では独身の(同居している語り手の)伯母の憐れみによる行動から奇妙な世界へ迷い込む「ポリー・モーガン」、過干渉(?)の母親と無関心な息子を描いた「幼子は迷いけり」が読後もやもやした感情にとらわれ記憶に残った。作品パートが206ページまでと短いながらも、シンプルに作家の面白味を伝えた好短編集。
2012/01/17
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