消えた太陽 (魔法の本棚)
消えた太陽 (魔法の本棚) / 感想・レビュー
ハルバル
波乱万丈の経歴とその無国籍な作風からロシアでは「グリーンマニア」と呼ばれる熱狂的な読者がいるとのこと。革命後の現実から目を背けたことから逃避的と揶揄されたが、悲惨な時代でも夢と希望を失わないのもある種の才能だろう。「荒野の心」、「水彩画」、「緑のランプ」あたりがグッときたかな。「オーガスト~の結婚」の新婚当夜に失踪する夫…ってはこれはホーソーンの「ウェイクフィールド」を思わせるね。あっちはひたすら謎と不条理だけどこっちは愛というのがやはり作家の資質の違いか。好きなのはやっぱりホーソーンの方だけど。
2018/06/10
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余韻の残る短編集。「空の精」は柴田昌弘氏の「成層圏のローレライ」を思い出した。「緑のランプ」と「冒険家」で描かれている気持ちの情景が好き。人の心の機微を丁寧に書いた本だと思う。
2011/08/04
madhatter
やはり表題作が素晴らしい。悪意に矯められない、美しいものを求め、信じてやまないロベルトの心に、強い印象が残った(ただ同時に、悪意も善意によって変わることはない)。他の作品を読んでも、現象の特異さより、人の心の繊細な動きや強さ(それが良いものであれ、悪いものであれ)を描く力のあった作家であるように見受けられる。その他お気に入りは「犬通りの出来事」「荒野の心」「緑のランプ」。
2010/05/04
惨児春
革命期のロシアにおいて欧米・無国籍風の小説を書き続けたグリーンの短編集。どの作品も一貫して謳い上げているのは非日常や冒険の素晴らしさだ。普通の遊びに飽きて人を金の力で玩具同然に扱う富豪が何度か登場するのだが、彼らがどこか憎めない描かれ方をしているのも、人の道を外れてなお冒険を求めているのには変わりないということか。救いのない結末の話でも爽やかな余韻を残すのは、出てくる人物が皆行動的だからだろう。『荒野の心』『空の精』『おしゃべりな家の精』あたりの作品がこの作者の短編の多様さを示しているように思う。面白い。
2016/07/03
王天上
「魔法の本棚」シリーズ、全部読んじゃった。あーあ。もっと食べたい。
2012/05/06
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