土台穴 (文学の冒険シリーズ)
土台穴 (文学の冒険シリーズ) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
旧ソ連の集団農業化を風刺したとされる作品。共同住宅の土台となる穴を掘る仕事に従事する人々の姿を描きながら、生きることや労働、政治、国家の意味を問いかけていく。暗く、重たく、難解な内容ながら読み始めたらやめられない。異様な迫力に圧倒される。作者が「20世紀のドストエフスキー」と呼ばれることに納得。ドストエフスキーの小説のように様々な要素が、物語の中でぶつかりあっており、読み手に強烈な印象を残す。何を風刺しているのか見極めにくいが、作者が個人を押し潰す全体主義に激しい怒りをぶつけているのは、理解できた。→
2018/03/10
aika
長年勤めた工場を解雇されたヴォーシェフがたどり着いた場所。それは住宅建設という未来のために、男たちが身を粉にして掘り続ける「土台穴」と、貧農から富農が奪われ、殺されるコルホーズでした。労働者たちのひとすじの希望が、チークリンが拾った、かつての思い出の女性が残した娘ナースチャ。劣悪な環境の中でも、男たちは少女を守り続け、最後に再び、涙にさえならぬ哀しみと伴に土台穴を掘る姿が伝えてくれます。それでも人間は、他者を思う悲しみや喜びを胸のうちに湛えて生きられるし、命を脅かす力さえ、それを阻むことはできないのだと。
2020/09/18
りつこ
近年まれに見る読みにくさ。何がなんだかと頭の中がはてなでいっぱいになりながらどうにか読んだ。最初は社会主義の中で自分の生きる意味を見失った青年の哲学的な悩みを描いた作品なのかと思ったのだが、プロレタリアートが住むためのユートピアを建てるための土台穴を掘る人たちも農業集団化の名目で富農を追い出す人たちもそれを迎える貧農も誰も彼もがバタバタと死んでいく。人々の希望でもあり体制を声高に支持していた少女の死がロシアの未来を暗示するようでもあり不気味。その中にあって嬉々として鉄を叩く熊のミーシュだけが幸福そうだ。
2014/02/15
かもめ通信
再読。『チェヴェングール』刊行の前に、改めて読んでおこうと思って手を伸ばしたのだが、相変わらず難物だった。
2022/06/07
猫のゆり
私的生活30周年を迎えたある日、ヴォーシェフは生活の資を得ていた小さな機械工場を解雇された。・・冒頭からして、堅い文章に萎縮しつつ、何とか読み終えたんだけど、うーん、どれだけ理解できたのか(汗)。新たに得た、大規模な共同住宅を建てる礎となる「土台穴」を掘る仕事。それは人々の希望の灯となるはずなのに、どうみても死の象徴としか思えなくなってくる。途中、登場人物の忘れられぬ女の死の床で・・、など印象的な場面はいくつかあり、その時代の切実な背景を知らぬ身としては、一種の幻想文学的な読み方しかできなかった。
2012/09/21
感想・レビューをもっと見る