オレンジだけが果物じゃない (文学の冒険シリーズ)
オレンジだけが果物じゃない (文学の冒険シリーズ) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
【図書館本】著者の自伝的小説。 イギリスの田舎町で熱狂的キリスト教信者の養母の下、伝道師となる英才教育を施されるジャネット。幼い彼女には教会と母がすべてだった。歪んだ小さな平和はしかし、彼女が女性に恋をすることで崩壊を迎える。 暗いテーマだが、少女の成長小説とも読める本書のなんとなく明るい感じは、洗脳の中で彼女がその世界を風刺的に見て、確固たる自分の意志で道行きを決めている点。間に唐突に挟まれる妄想的物語が彼女を救っていたのだろうし、読みながらその強さにこちらまで救われ、物語というものの力を感じさせる。
2018/04/26
NAO
狂信的なで断固とした母親に伝道師になるべく育てられたジャネット。あまりにも強い意思を持った母親、個人の意思を認めようとしないカルト的な宗教。そういった環境で育った子どもの苦悩や葛藤が描かれていくのかと思いきや、話は同性愛の方へと流れていって、なんだかまとまりがないような印象を受けた。
2019/10/23
ゆのん
【ガーディアン必読1000冊】著者の生い立ちを土台にした半自伝的小説。熱烈なキリスト教徒の母親から伝道師になるための厳しい教育を叩き込まれた少女。神の教えが全てだと信じていたが一人の女性に恋した事から運命が一転する。信仰ゆえに幼い頃から疎外感を感じるが、神と母親への純粋な愛が勝る姿が痛々しくも美しく思える。反面、同じように愛される事を求めていた様に感じる。途中のエピソードやラストの再開を読むと歪んではいるものの母親の娘への愛情が感じられたのが救い。所々の挿話も物語を理解し易くなっていて良かった。231
2020/10/14
マリリン
8つのストーリーを境界が曖昧な愛おしくなる生で紡いだ物語は、不思議な魅力がある。宗教的な記述はダンテの「神曲」が脳裏をよぎる。内容は重いものの、著者のありのままの姿や思考をユーモアを交え変幻自在に織り込んだ物語に惹かれる。特に最終章「ルツ記」は心に沁みた。どうしても馴染めない世界はある。普通って? その枠に入れないと...。生き方は多様であっていい。人との出会いは大切。許容し合える関係は生きる糧となる。同じものを同じように見ていることはなくても、近しい感覚で見る事ができたら...そう思える作品だった。
2022/02/28
こばまり
ドラマティックな物語だがこれが半自伝的、しかも処女作なのだそうだ。なんという濃密さ。示唆に富み教訓に満ちたフレーズの数々が楽しいです。優しいおばさんに厄介なおばさん。英国のいろんなおばさんが出てくるおばさん小説だと思いました。
2014/10/02
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