ロマン 2 (文学の冒険シリーズ)
ロマン 2 (文学の冒険シリーズ) / 感想・レビュー
HANA
長々と我慢していた甲斐があった。バカップルの独白と延々と続く結婚式の様子にうんざりとさせられ、それが頂点に達したところで大爆発。のつもりが、嗚呼こう来るか。以前『愛』に収録されていた数々の短編で少しは慣れていたつもりなんだけど、アレを長編で延々とやられると妙な浮遊感を感じるな。特に教会での作業めいた場面。これ上巻から裏表紙の粗筋書いているのは失敗だと思ってたけど、全然そんな事なかった。むしろ粗筋さえ引っ掛け、この粗筋でこの本に興味持った人の感想を見てみたい。いやホント期待とは全然違ったけど期待以上でした。
2015/02/16
syaori
この小説が積み上げてきた世界、ロシア的な善良で素朴な生活は、ロマンの婚礼の夜に完膚なきまでに叩きのめされます。あたかもクリューギンが言っていた芸術が蓋となって隠していたもの、その下で煮えたぎるリビドーや殺人欲があふれ出してきたように。ロシア的な世界を切り刻み、ドロドロに解体し汚穢と混ぜ合わせた、吐き気を催すような混沌、ひどく単純で呪術的ですらある文字の羅列の先に何があるのでしょう。この小説はロマンの墓碑銘を提示するところから始まるのですが、作者がロマン(小説)に墓碑銘をつきたてた、その先がひどく知りたい。
2018/07/06
りつこ
上巻は読むのに時間がかかったが後半は一気だった。すごいと聞いていたので期待して読んでいたけど、そうきたか。これはもうほんとに感想が書きづらい。ネタパレしたくないけど、なにかすごいらしいというのを聞いてなければ前半で挫折する恐れも…。そもそも自分も「青い脂」読書会で「ソローキンで一番読んでほしいのはロマン」と言われ、読もう読もうと思いつつ何年も積んだままだった。細やかな感情の描写やうんざりするほどの愛の言葉や抱擁やキスがこの後半のために積み上げられていたとは。素晴らしいというかバカヤロウというか。まいった。
2018/07/13
三柴ゆよし
怒涛の勢いで下巻も読了。聞きしに勝る狂いッぷりに感動すら覚えた。永遠に続くかと思われた19世紀ロシア農村のうるわしき生活は、突如として津山三十人殺しめいた地獄絵図に変貌する。ラスト数十頁においては、テクスト本来の意味性すら完膚無きまでに破壊しつくされ、読者のゲシュタルト崩壊を招く、映像化不可能な単文の羅列(ロマンは××した。ロマンは××した。ロマンは××した。ロマンは……以下略)がどこまでも反復される。これはまさしくロマンの名を冠された男によるロシアの伝統的長篇小説(Роман)の大量殺戮である。傑作。
2012/09/25
ヘラジカ
「振り上げたなら斬り落とせ!」破壊された文学、破壊する文学?丹念に作り上げた仮想世界、磨き上げた美しき彫刻を、容赦なく解体していくその筆致たるや、圧巻。この作品によってロマン(小説)は死んだのか?いや、生まれたのだ。ソローキンは、既存の文学を単純なテクストへと解体し、血と膿と糞と反吐を捏ね合わせることで、新しい文学を作り上げた。蓋し、ロマンは生まれたのだ。
2015/02/28
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