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肉体と死と悪魔―ロマンティック・アゴニー

肉体と死と悪魔―ロマンティック・アゴニー

肉体と死と悪魔―ロマンティック・アゴニー

作家
マリオ プラーツ
Mario Praz
倉智 恒夫
土田 知則
草野 重行
南條竹則
出版社
国書刊行会
発売日
2000-08-01
ISBN
9784336042767
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肉体と死と悪魔―ロマンティック・アゴニー / 感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

神話や幻想・怪奇小説に描かれるエロスとタナトスと血、サディズム、「神聖なものを穢している」と自覚して行う悪徳の甘美さ、悪女としての側面も持つファム・ファタールに対しての理性で欲望を抑えようとする男の滑稽さなどを古今東西の書物を交えて語り尽くした優美で玲瓏な伽藍。余りに蠱惑的な引用の味わいは、舌にまとわりつく様な渋みと酸味、痺れるような爛熟した甘み、もっと、欲しくなるような中毒性に満ちていて読む度に飢えていきそう。注釈も豊富で、おかげさまで読みたい怪奇・幻想小説が増えて嬉しさと困惑で頭を抱えそうになる。

2018/09/29

傘緑

「博操をきわめ、しかも的を得た引例の数々がたがいに響きあって紡ぎ出すレミニサンスのシンフォニックなこだまに、われわれは魅せられる(解説)」怖れと蠱惑をもってその圧倒的な引用の洪水に呑み込まれました。プラーツが同族への愛情と憎悪を込めて「剽窃という行為は、もとの作品に対する愛着と共感とを暗黙裡に示すものだ」といってダヌンツィオの、「自前の声音と信じていたものが、実はこだまでしかなかった」としてワイルドの、煌びやかな作品から、巧妙に織り込んだ引用である剽窃の薄衣を、一枚一枚剥がしていく手際がエロチックだった

2016/11/11

roughfractus02

歴史の時空に固定されるロマン派なる語は、著者には固定を拒む過程、運動、力のようだ。それは、知の秩序から逸脱するが、対立的な立場にはならない。ゲーテ以降のカテゴリーを示すこの語に苦悶(agony)なる語を接続した本書は、古典主義との対立から逃れるように、死と腐敗の過程を表すメドゥーサの美、サタン像の変貌、責め苛まれる女の苦痛の時間、つれなき美女に対する心理の力学等を、整列する文字列を揺るがすような膨大な引用からなる情報の海に浮かばせる。それゆえロマン派を極端化し、自ら立場として固定するデカダン派には厳しい。

2019/09/07

Yuzupon

タウンページばりの784ページにビビる。この本では、英仏19世紀末に栄えた怪しげな世紀末芸術をロマン主義の病んだ一面と捉えて批評している。古きローマへの懐古や幻想が円熟し、ローマ帝国の終焉の姿(デカダンス)に考えが及んだとき。そこには、産業革命後当時の英仏の状況によく似たローマ瓦解後の東方正教会圏の世界が現れる。キリスト教的秩序の荒廃した世界には、東洋の女神か女傑のような破滅をもたらすつれなき美女が微笑んでいるのだ。

2013/08/18

misui

ロマン派が導き入れデカダンに到る悪徳や残虐の主題を、メドゥーサの美、宿命の男や女について見つつ、サドにひとつの源を認めて英仏の作家中心に論じている。註を除けば600ページほどの大冊の全てがエロスとタナトスの百科事典といった風でさすがに疲弊した。好きだけどもういいやという気になる…。

2020/05/24

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