高い城・文学エッセイ (スタニスワフ・レム コレクション) (スタニスワフ・レムコレクシヨン)
高い城・文学エッセイ (スタニスワフ・レム コレクション) (スタニスワフ・レムコレクシヨン) / 感想・レビュー
三柴ゆよし
かつてゴンブローヴィッチは「ボルヘスを殺せ」と言った。レムはもっと辛辣だ。ボルヘスの作品に共通する構造を無惨に暴き出し、彼を最もすぐれた図書館員、偉人の亜流、文学的たわむれの人として一蹴する。その他、ナボコフとドストエフスキーを並べて語るという、ナボコフが読んだら激怒のうえ即死みたいな評論もすごい。前から怖い人だと思っていたが、やっぱりレムは怖かった。記憶のなかの物と者とに密着、活写することで甘なセンチメンタリズムに陥ることを避けている、完璧に退屈な少年時代の回想記「高い城」はしかし俺の好みではなかった。
2017/08/01
∃.狂茶党
『SFの構造分析』ふたつの自伝を読んでからだと、この文章は、願いのようにも捉えられる。 文学とSFの違いファンタジー・幻想文学との違い、などから、レムを魅了した「SF」少数派である「正しいSF」への諦めのような感情が感じられる。 IQ180の天才少年にとっては世界を広めるものこそが「SF」だったのだろう。
2023/02/28
ふみふみ
文学エッセイの方ですが、自分はディック好きなのでディック論が特に読みごたえありました。アメリカSFの権威・商業主義、閉鎖性を批判する一方、ディックの功績、SFの決まりごとを打ち破る独創性、想像力を高く評価。内容は矛盾だらけで安っぽさも否めないけど、この孤軍奮闘する想像力をまのあたりにすると、それだけでもう十分、ポーランドの読者諸君よ、ディックの著作は注意深く、そして好意的に読もうぜと。さくっと要約しましたが、レムの文学論、文学批判論、「ユービック」分析などなど織り交ぜた内容は、抽象的で難しい文章に更に直訳
2022/11/27
プラス3
『高い城』自伝小説だが、あのレムがまともな?モノを書くはずがなく、めちゃくちゃ面白いです、ハイ。『文学エッセイ』というかハイレベルな批評・評論。「ドストエフスキーぐらい小学生の時に読んでるよな?」みたいな感じで、レムの博識っぷりが遺憾なく発揮されております。気になるのはやっぱりディック評。ディック感覚を高く評価してたのは知ってたけど「紙と鉛筆があれば、SFとしておかしなとこはいくらでも挙げられるが大事なのはそこじゃないだろ」とすごくまともなことに逆に驚いたw。
2015/10/06
roughfractus02
ナチス侵攻の時代背景を描かない自伝は、友達と初恋という部品からできたおもちゃを扱うように、少年時代を分解する。そこに生じる執着や愛玩の感情に懐かしさはない(『高い城』)。小説に慣れた読者が感情を描くのが不得手と見なす作者のエッセイ(ドストエフスキーからディックまで)も、SF論も構造主義批判も科学をベースに構成された機械かどうかが問われ、作品論の主人公も精神分析にかけられ、そこに描かれない宇宙人の文化すら要求される。フィクションを仮説と捉える作者にとって、作品は読者の読みより未来の検証に開かれているようだ。
2018/12/27
感想・レビューをもっと見る