アジアの岸辺 (未来の文学)
アジアの岸辺 (未来の文学) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
可愛い『いさましいちびのトースター』で知ったディッシュ。しかし、こんな救いもない話も描けるなんて…。身を持ち崩したにも関わらず、危機感がない男の悪夢を描く「降りる」が『パラドクス』+『泳ぐひと』みたいな嫌さにどんより。「争いのホネ」は『陰摩羅鬼の瑕』みたいですが、着地点がこう来ると怖過ぎて仕方ない。「カサブランカ」は「すると岩が叫んだ」や映画『目には目を』のような帝国主義的考えを持つ男がコテンパンに痛めつけられる姿に一種の爽快感を覚えてしまうのが怖い。「国旗掲揚」は現在の米国や比国を予言しているよう
2017/11/15
geshi
前半は理不尽に閉じ込められる話が続いて読み進めるのがきつかった。特に『リスの檻』は宇宙人によって檻に飼われた作家のモノローグがそのまま現実の作者自身を反映しているとしか思えない。『アジアの岸辺』は幻想と現実、アジアとヨーロッパの狭間で酩酊させられ”ここではないどこか”へ連れていかれる。『犯ルの惑星』はブラック通り越して劇薬。ここまでモノとしか扱われない女性を描く話は現代ではフィクションでも許されないだろう。『本を読まない男』は情報が高速化された現代に通じる話であり、ブラックなオチにニヤリ。
2023/09/05
かわうそ
意地が悪いタイプの作品が多くて、中でも不条理極まる「降りる」「カサブランカ」が面白かった。コミュニケーションがテーマの「話にならない男」、歴史的名作と言われる「リスの檻」、バカSF「犯ルの惑星」なども好み。
2013/09/21
mejiro
「降りる」「カサブランカ」「アジアの岸辺」「死神と独身女」「本を読んだ男」が特におもしろかった。著者の才能が光る多様な短篇集。「死神と独身女」、こういうタイプの死神は寡聞にして知らなかった…。この死神の手を借りるよりは、自然に死にたい。「犯ルの惑星」は、悪趣味でえげつないと思うが、最後まで読めたのは著者の巧さによる。スラデックに負けない奇想、風刺の効いた端正な文章が魅力的。
2017/08/10
向う岸
☆3 13の短編集。前半は日常とは違う世界に閉じ込められてしまうテーマが通底している。それは異形の世界だったり、言葉や風習が違う異国だったり。後半は風刺のきいたSFがテーマだった。なんかもう死ぬのが馬鹿馬鹿しくなる「死神と独身女」が良かった。
2016/05/30
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