白い果実
白い果実 / 感想・レビュー
ケロリーヌ@ベルばら同盟
マスター・ドラクロン・ビロウ。悪魔的叡智の持主にして独裁者が、その頭脳から生み出した、享楽と悪徳と歪な科学が充溢し、観相学が司法を統べる都、理想形態都市から、一級観相官クレイが、属領で起きた「白い果実」盗難事件調査の為に派遣される。奇想と諧謔、美と悪夢と幻覚が織り成す混沌の物語。二十世紀の終尾を飾る、幻想文学世界大賞に輝いたこの本作が、海外文学翻訳の第一人者金原瑞人氏の翻訳と、山尾悠子氏の端麗な文章を得て、冥い魅力を放つ。醜悪さの中に霊妙が煌めく「美薬」に充ちた、当に中毒性のある作品世界に囚われる読後感。
2021/08/06
藤月はな(灯れ松明の火)
周囲を愚鈍だと馬鹿にする鼻持ちならない観相官のエリート、クレイは退廃と発展の理想郷を作り上げた天才的頭脳を持ち、周囲の盲信によって成り立った独裁者のビロウの命で不老不死にもなれるという盗まれた「白い果実」を探すが・・・。幻覚作用の強い「美薬」中毒となり、聡明で美しき娘、アーラに一目惚れし、覗き、ストーカー、相手への過剰な美化と性質の悪いロマンシズム満載の愚行を起こし、相手に子供がいると知った途端、顔を切り刻むというエゴイズムに憤然。ミイラだった「旅人」がアーラを救い出した時には喝采を挙げていました。
2013/01/09
かわうそ
独裁者の内面を具現化した理想形態市、青い鉱石と化する鉱夫、伝説の白い果実といった舞台装置に、山尾悠子さんの硬質な文体が相俟って美しくも残酷な幻想の物語が展開される。主人公はもったいぶった嫌みな性格の割にすぐつまずいてコケる。面白かったです。
2019/04/27
あたびー
#日本怪奇幻想読者クラブ 理想形態市から辺境へ、貴重な白い果実の盗難事件を調査するため派遣された1級観相官クレイが、鼻持ちならない人物であることに読者は顔をしかめながら読み始めることになる。その後驚愕のエピソードを積み上げながら、この超一流の物語は独裁者の創り上げた都市の崩壊までを描く。全てのイメージが突飛で、全てのアイデアが驚嘆に値する。3部作の1。
2020/05/14
橘
読むのに時間がかかりましたが、とても面白かったです。訳したものを、山尾悠子さんがご自分の文体にされていて、この壮大で幻想的な世界に惹き付けられました。理想形態市の破滅があんなカタルシスとは。クレイもビロウもあまり好きになれませんでしたが、自業自得なのかな。シリーズものみたいなので、続きも楽しみです。素晴らしかった。
2016/03/10
感想・レビューをもっと見る