ベータ2のバラッド (未来の文学)
ベータ2のバラッド (未来の文学) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
「ベータ2のバラッド」主人公が鼻持ちならないけど、そんな主人公がバラッドの齟齬から導き出した事実に圧巻とさせられました。共感覚を持ち得る未知なるものとのファーストコンタクトはあの時は恐怖しかなかったけど、今は希望に溢れているのが救いでした。問題作な「四色問題」は政治の諜報活動、戦争、セックスという無関係な事柄は地球という図形の塊を四色に分けるという意味か?分からんぞ!「降誕祭前夜」はパラレルSFでスパイものなロマンスが切ない分、「プリティ・マギー・マネーアイズ」の男女間のロマンスの中にあるシビアさに絶句。
2015/11/29
ニミッツクラス
06年の税抜2400円の初版。国書刊行会SFの“未来の文学”第二期配本の、アンソとしては一発目。本書は“ニューウェーヴSFの知られざる中編集成”とあり、文字通り4編が本邦初訳なのは大いに僥倖。アンソの構想から刊行までが圧していたのか翻訳者はバラバラ。先ずはディレイニーの表題作で唸る。これ、通読後に再読するとバラッドを利用した伏線の張り方の美しさが判る。お目当てはSFMに掲載されたエリスンの中編。賭博物の奇譚で暴力描写も無いけど、結末読むまで眠れない筆致。カウパーとウェルズはペアで二度美味しい。★★★★★☆
2019/06/25
Saku
はてさて、ニューウェーブとはなんぞや? というのが結局わからなかった。 この中では、表題作「ベータ2のバラッド」と「ハートフォード手稿」がちょっとミステリっぽくて好き。
2015/01/25
jojou
特に気に入ったのはディレイニー「ベータ2のバラッド」とキース・ロバーツ「降誕祭前夜」の二つ。「ベータ2のバラッド」は中途半端な印象もなくはないが、遺されたバラッドを手掛かりに移民船ベータ2の破滅の真相を紐解いていくという謎解き要素のある構成がうまく、面白い。また、言語に関する記述なども興味深かった。ディレイニーにしては読みやすく、ストレートに楽しめた。「降誕祭前夜」は、第三帝国が勝利した世界の英国で起こる、クリスマス・イブのサスペンスを静謐な雰囲気で描く中編で、緻密で緊迫感のある描写に入り込んでしまった。
2021/07/20
unknown
ミステリ要素も交えたスペースオペラであり、序盤の謎が判明する終盤の展開にSFのカタルシスが味わえるディレイニーの表題作。ワイドスクリーン・バロックばりにカマされるハッタリと目まぐるしい展開(いつの間にあんたセックスしてんの!?)で翻弄の極みに達する「四色問題」(バリントン.J.ベイリー)。スロットマシンに残る女の無念が一人の男を狂わせる様を、最高に刺激的な流れで読ませる「プリティー・マギー・マネーアイズ」(ハーラン・エリスン)の三編が強烈。ギャンブル!女!巨万の富!の三拍子には、やはり破滅こそが相応しい。
2012/07/12
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